RACI チャートを使用してプロジェクトのオーナーシップとチームのコラボレーションを向上させる方法
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誰にでも、こんな経験があると思います。新しい大型プロジェクトがマネージャーのもとに舞い込み、チームが集まってどのようにそれに取り組むべきかを考えます。ただ、どこから始めたら良いでしょうか? 誰が何を担当するのでしょうか? そして、どうすれば全員が同じタイミングでゴールにたどりつけるのでしょうか?
RACI チャートとは?
RACI チャートは、特定のプロジェクトにおけるチーム メンバーの役割 (Responsible (実行責任者)、Accountable (説明責任者)、Consulted (相談先)、Informed (報告先)) を示しています。
RACI チャートは、責任分担マトリックス (RAM) またはプロジェクト分担マトリックス (PAM) とも呼ばれます。RACI はシンプルな表ですが、プロジェクトやキャンペーンで誰が何をすべきかを特定するのに大いに役立ちます。
RACI モデルのようなプロジェクト管理フレームワークを使用すると、最初から最後まで全員がインプットとオーナーシップを持つワークフローを構築できます。
RAPID、DACI、RACI の違い
あなたは、「RACI とは聞き覚えがある」と思うかもしれません。恐らくそうでしょう。RACI は、スクラム マスターやアジャイル マネージャーによってよく使用されるフレームワークです。しかし、RACI と混同されるいくつかの類似モデルが存在します (特に RAPID と DACI)。これらはどちらも意思決定とグループの合意を支援するフレームワークです。
フレームワーク名 | 用語の定義 | 使用目的 |
---|---|---|
Framework name RAPID | 用語の定義 Recommend (推奨)、Agree (同意)、Perform (実行)、Input (入力)、Decide (決定) | 使用目的 意思決定 |
Framework name DACI: 意思決定フレームワーク | 用語の定義 Driver (推進者)、Approver (承認者)、 Contributors (貢献者)、Informed (報告先) | 使用目的 意思決定 |
Framework name RACI | 用語の定義 Responsible (実行責任者)、Accountable (説明責任者)、Consulted (相談先)、Informed (報告先) | 使用目的 プロジェクト管理 |
これらの違いは何でしょうか? RAPID と DACI は行動を起こす前にグループが取るステップとして設計されているのに対し、RACI は誰が行動を起こすかを決める計画です。
RACI チャートはなぜプロジェクト管理にとって重要なのでしょうか?
2. コミュニケーションの一元化
整理されていないメール スレッド、ダイレクト インスタント メッセージ送信、コメントなどがあちこちに散らかっている状態で、コミュニケーションが難しくなっています。
これはプロジェクトにとっては良いものではなく、時間の浪費につながります。さまざまな調査によると、コミュニケーションがプロジェクトの失敗に繋がる最も一般的で大多数の原因となっています。チーム メンバーが情報をチェックしなければならない場所が多すぎると、連絡が錯綜して締め切りが破られ、タスクが忘れられてさまざまな混乱が生じます。
タイムラインやステータスの更新から、フィードバックや質問まで。プロジェクト管理ソフトウェアなら、すべてのコミュニケーションを 1 か所にまとめて誰でも簡単にアクセスできます。これによってサイロが解消されるため、全員が知識を共有するだけでなく、その共有方法や共有場所を効率的に管理できます。
RACI モデルを理解する
どのような場合に RACI マトリックスを使用すべきでしょうか? メールのチェックや電話応対など、日常的なタスクに RACI を設定する必要はありません。しかし、アプリのユーザー インターフェースの改善や新製品のリリースを行う場合など、プロジェクトに社内後援関係者がいて、長期的に影響を与える可能性がある場合、RACI チャートがあれば最初から足並みを揃えられます。
RACI マトリックスの 4 つの役割、つまり実行責任者、説明責任者、相談先、報告先の役割について詳しく見ていきましょう。
実行責任者: タスクを実行する
モデルの「R」はパフォーマーの役割を果たします。実行責任者は、説明責任者から「ホームページのワイヤーフレームをデザインする」などの責任を委任され、合意されたパラメーターと合意された期限内にその責任を果たさなければなりません。1 つのタスクに複数の実行責任者がいる場合もあります。そのバランスを適切に取り、プロセスの各段階で誰が何をすべきかを明確にします。
説明責任者: プロジェクトを監督する
「A」は、すべての実行責任者が確実にタスクを完了するよう保証することを任務とする説明責任者です。実行責任とは異なり、説明責任を他の人物に委任することはできません。この任務は、プロジェクト全体を通して意思決定者および指導者を務める 1 人の説明責任者のみに割り当てます。これにより、タスクが許容できる標準で完了します。
相談先: 情報を提供する
「C」、つまり相談を受ける人物は、チームの中で知識が豊富な人物です。相談先は、タスクに関する助言、追加の背景情報、アドバイスを提供してくれます。あなたがワイヤーフレームのデザインを担当しているとしましょう。Web サイト管理者に相談して、自分にはコンテンツ管理システムへのフルアクセス権がきちんと設定されているか、自分が作成した新しい CSS で障害が起きることはないかなどを確認してみるとよいでしょう。
相談先は、あなたがタスクを実行するために必要なすべての情報とアクセス権を提供してくれます。タスクとその複雑さに応じて、相談先は 1 人から 3 人です。早い段階で相談に乗ってくれる相手を特定し、プロジェクトとそのワークフローに参加してもらいましょう。
報告先: ステータスの更新を受け取る
「I」は、プロジェクトの情報を求めている、または必要としている、報告対象となる承認者または関係者です。「I」は、リーダーシップ チームや、プロジェクトを前進させる部門長など、多くの人物の可能性があります。彼らに報告することにより、社内の透明性が高まり、1) プロジェクトが予定どおりの日程および期待どおりの内容で進んでいることを認識できること、2) プロジェクトが確実に承認を得られ、関係者の意図に沿っていることが保証されること、の 2 点が保証されます。
RACI チャートを作成する
RACI チャートとは何か、何のために作成するかがわかったところで、一緒に RACI チャートを作成しましょう。あるプロジェクトで、新しいサービス ラインの Web ページを作成しているとします。プロジェクト完了までのラインで、誰がどのタスクを実行しますか?
ステップ 1: タスクとワークロードを特定する
プロジェクトの目標を達成する道のりで何をする必要がありますか? プロジェクト (新しい Web サイトの立ち上げなど) の中核となるタスクをいくつか見てみましょう。
- ホームページのワイヤーフレームをデザインする
- グラフィック デザインとアニメーションを作成する
- SEO キーワードを特定する
- ドメインとサーバーをセットアップする
- ホームページのコピーを書く
これらの主なタスクには、ワイヤーフレームの承認やドメイン ホストの請求情報の設定など、実行対象の小さいサブタスクがある場合もあります。チームと協力してこのようなサブタスクを特定し、途中で予期せぬことによってワークフローが妨げられたり、成果物を遅らせたりしないようにします。
ステップ 2: 役割を特定する
担当のグラフィック デザイナーは SEO キーワードを調査せず、コピーライターもドメイン ホストを設定しません。チームと協力して話し合い、そのような役割を特定します。たとえば、グラフィック デザインのタスクとサブタスクを次のようにします。
グラフィック デザインとアニメーションの作成 — Ariel
- Web サイトのヒーロー イメージの作成 — Natalie
- Web サイトのヒーロー イメージの確認と承認 — Tessa
- ヒーロー画像のアニメーション化と .mp4 ファイルへの変換 — Anji
- 完成したヒーロー画像のワイヤーフレームへの取り込み — Ariel
これらすべてのサブタスクで、Natalie と Anji はデザインとアニメーションの作成という目標に向けた個々のタスクの実行責任者です。Tessa は相談先となり、最初の画像を確認して承認し、その画像がブランドのガイドラインに沿っているかを確認します。Ariel は他の 3 人の作業についての説明責任者であり、完成品が確実にワイヤーフレームに取り込まれるようにします。
ステップ 4: チャートを分析してギャップを特定する
チームと作業セッションを実施し、作業の重複を防ぎ、障害を未然に防ぐためにチャート内のギャップや重複を特定します。ギャップや重複の特定から担当者間のバランスの分析など、RACI モデルをどのようなものにするかについては、いくつかの一般的なガイドラインに従います。
チャート全体を見ると、重複や依存関係があることがわかります。たとえば、SEO マネージャーの Jenna はコピーライターの Edwin が作業を始める前に、ホームページの SEO キーワードを特定しなければなりません。そのため Edwin のタスクについては、Jenna が相談先ですが、Jenna のタスクは彼女自身が実行責任者です。
また、タスクごとの説明責任者が 1 人しかいないこともわかります。この人を、船を操縦するタスクレベルの「プロジェクト リード」だと考えると、船を操縦するのに複数の船頭は必要ないことがわかるでしょう。
実行責任者と相談先の数を制限する方法についても考えておく必要があります。R (実行責任者) が多すぎると、誰が何をすべきかが明確にならず、誰も責任を負わないため、最終的にタスクが暗礁に乗り上げることがあります。
C (相談先) が多すぎると、複数の料理人が相反する意見や情報を述べているようなものになります。それぞれの実行責任者に対して行程を導く明確な指示は 1 つにする必要があります。
また、十分な I (報告先) が提示されていないことは、組織内の積極的なコミュニケーションや透明性が不十分であることを示しています。プロジェクトが承認され、インシデントなく実施されるには、経営陣と関係者がプロジェクトに全面的に賛同し、理解していることを確認する必要があります。
Confluence で RACI チャートを使用する
RACI チャートを使用する際の基本的なベスト プラクティスを理解したところで、Confluence を使用してチャートを作成しましょう。RACI マトリックスを Confluence ドキュメントに実装して、プロジェクトのコミュニケーションと説明責任を改善します。
Confluence に RACI マトリックスを追加する方法は次のとおりです。
- 上部のツールバーの [挿入] をクリックし、ドロップダウン メニューから [テーブル] を選択します。
- テーブルのダイアログ ボックスで、RACI チャートに必要な行と列の数を選択します。たとえば、4 つのタスクがあるプロジェクトの RACI チャートを作成する場合、5 つの行と 5 つの列のテーブルを作成できます。
- 最初の行には RACI チャートのヘッダーが含まれます。使用できるヘッダーは、Task (タスク)、Responsible (実行責任者)、Accountable (説明責任者)、Consulted (相談先)、Informed (報告先) です。
- テーブルに適切な情報の入力を開始します。それぞれのタスクやアクティビティについて、対応するセルに各チーム メンバーの適切な RACI コードを入力します。
- ヒント: 色や記号を使用すると、チャートが見やすくなります。たとえば、実行責任者には緑、相談先には黄、報告先には青、説明責任者には赤を使用します。
次に、このテーブルをプロジェクト計画書からキックオフ アジェンダまで、関連するプロジェクトの Confluence ページに使用したり、さらには Trello カードとして、あるいは Jira 課題内にページを追加して使用したりできます。これにより、チーム メンバーはどのアトラシアン ツールを使用していても、自分の役割と実行責任を理解できます。コミュニケーションと説明責任を促せばチームのパフォーマンスが向上し、すべてが成果につながります。
Confluence の高度な RACI テクニック
RACI モデルはプロジェクトが進むにつれ変化し、拡大する可能性があるため、チャートを最新の状態に保つことが重要です。ここでは、詳しいベスト プラクティスをいくつかご紹介します。
定期的に確認して更新する
RACI チャートを定期的に確認して更新し、プロジェクトの最新の状況が正確に反映されているようにします。役割が最新で、タスクに完了のマークが付けられ、依存関係が概説されていることを確認します。Confluence を使用し、チャートを確認して更新するスケジュールを設定し、プロセスを監督する責任者となるチーム メンバーを割り当てます。
プロセスにチーム メンバーを含める
チャートを更新する際、プロジェクトに関わるすべてのチーム メンバーをタグ付けします。そうすれば、誰でも変化に気付き、それぞれが役割と実行責任を理解していることを確認できます。Confluence のコメントやダイレクト メッセージを使用して、更新や変更をチーム メンバーに非同期で伝えます。
変更を文書化する
RACI チャートに変更が加えられたら、その変更を Confluence で文書化します。これには変更日、変更者、および変更理由を含められます。この文書化によって、全員に変更を認識させ、その背後にある理由を理解させられます。
相談先は、あなたがタスクを実行するために必要なすべての情報とアクセス権を提供してくれます。タスクとその複雑さに応じて、相談先は 1 人から 3 人です。早い段階で相談に乗ってくれる相手を特定し、プロジェクトとそのワークフローに参加してもらいましょう。
簡潔さを維持し、
RACI チャートは簡単に理解しナビゲートできるものにします。Confluence では色や記号などの視覚による補助を使用すると、チャートが見やすくなります。さらに、このチャートは最も重要なタスクと実行責任のみに焦点を当てた簡潔なものにします。サブタスクを Trello または Jira でマッピングして、プロジェクトを追跡しやすくします。
役割と実行責任を確認する
更新するときは、必ずそれぞれのチーム メンバーの役割と実行責任を確認します。タスクを追加または調整する際、チームは実行責任のギャップや重複を特定できるようにします。Confluence のタスク管理機能を使用して、チーム メンバーにタスクと実行責任を割り当て、その後、Trello または Jira で委任します。さらに、チーム マネージャーはチームと協力して役割と実行責任のプレイを実施し、個々の実行責任を明らかにして、埋めるべきギャップを見出せます。
一貫性を確保する
次に、チャートと割り当てが一貫していることを確認します。チャートの使用方法について明確なガイドラインを定め、チーム メンバー全員にこのガイドラインが周知されていることを確認します。さらに、Confluence の Marketplace アドオン、テンプレート、またはマクロを使用すれば、さまざまなプロジェクトやチーム間でチャートの一貫性を保てます。
作業に取り掛かる
チャートができたら、プロジェクトの中心部分、つまり実行に移ります。適切な役割と想定が定まっていれば、タスク リストを処理しやすくなり、コミュニケーションもスムーズに進められるようになります。Confluence をお気に入りのコミュニケーション アプリと組み合わせて使用して、各タスクのステータス、依存関係、および発生の可能性のある障害について、全員に最新情報を伝えます。そして、プロセスは最初から完璧であるとは限らないと常に意識しておきましょう。それぞれのチームにとってフローが最適になるまで、何度も構築と反復を行います。では、試してみましょう。