共有
SVNでは、開発者は変更内容をローカルローカルマシン内の作業コピーから中央リポジトリにコミットすることによって作業成果を共有します。他の開発者はその変更内容を各々のローカル作業コピーにプルします。
Git のコラボレーションワークフローは大きく異なります。Git では、作業コピーと中央リポジトリとの間に技術的な区別はなく、各々の開発者がリポジトリ全体の作業コピーを保有します。変更は中央リポジトリではなくこのローカルリポジトリにコミットします。変更を他の開発者と共有するときは、このローカルな変更をサーバー上の公開 Git リポジトリにプッシュする必要があります。そうすることにより、他の開発者が追加されたコミットを公開リポジトリから各々の開発者のローカルリポジトリにプルできるようになります。
各々の開発者がリポジトリ全体を保有することが分散型バージョン管理の本質であり、このことにより様々なワークフローが可能となります。それらのワークフローの詳細についてはこのチュートリアルの Gitワークフローの章をご覧ください。
ここまでのステップではローカルのGitリポジトリを対象として移行処理を行ってきました。このセクションではこのローカルのリポジトリを Bitbucketがホストする公開リポジトリにプッシュする方法を説明します。移行期間中にGitリポジトリを共有することにより、進行中のSVN開発に影響を与えることなく Git コマンドを試みることが可能になります。切り替えを行うまでは共有Gitリポジトリをリードオンリーにしておくことが極めて重要です。即ち、すべての開発作業におけるコミットは引き続き元の SVN リポジトリに対して行います。
Bitbucket アカウントの作成
Bitbucketアカウントを保有していない場合は、それを作成する必要があります。ホスティングは5ユーザーまで無料ですので、今すぐGitワークフローの試用を開始することができます。
Bitbucket リポジトリの作成
次に、Bitbucket リポジトリを作成する必要があります。Bitbucket では、ホストされたリポジトリを簡便に管理するためのウェブインターフェイスを提供しています。ログイン後に Create repository ボタンをクリックするだけでリポジトリを作成することができます。

表示されたフォームに、リポジトリの名称とその説明を入力します。リポジトリを非公開にする場合は、Access levelオプションをチェックしたままにすれば、指定された開発者のみがクローンを行うことができます。Forking欄ではAllow only private forksを指定します。Repository typeはGitを選び, 使用するプロジェクト管理ツールがある場合はそれを選択し、Language の欄ではプロジェクトで使用する基本プログラム言語を選択します。

ホストされたリポジトリを作成するには、Create repositoryをクリックしてフォームを送信します。リポジトリが作成されると Next stepsのページが表示され、そこには既存のリポジトリの内容を取り込む場合に使用するいくつかの便利なコマンドの説明が記載されています。以下、これらのコマンドをひとつずつ説明します。
origin リモートの追加
ローカル Git リポジトリから作成した Bitbucket リポジトリへのコミットのプッシュを簡便化するために、Bitbucket リポジトリの URL をリモートとして保存します。リモートとは、URL の便利なショートカットのことです。技術的にはショートカットの名称は何であっても構いませんが、リモートリポジトリがプロジェクトの公式リポジトリである場合は習慣的にorigin
という名称を用います。ローカルのGitリポジトリで次のコマンドを実行し、新しいBitbucketリポジトリをorigin
リモートとして追加します。
git remote add origin https://<username>@bitbucket.org/<workspace-id>/<repo>.git
ここで、
の部分は Bitbucket のユーザー名で、
の部分は Bitbucket リポジトリの名称で置き換えてください。あるいは、Bitbucket ウェブインターフェイスから完全な URL をコピーしてそれを貼り付けてもかまいません。
上のコマンドを実行すると、Bitbucket リポジトリの参照として origin
を他の Git コマンドで使用できるようになります。
ローカルリポジトリの Bitbucket へのプッシュ
次に、ローカル Git リポジトリの内容を Bitbucket リポジトリに取り込まなければなりません。この操作は「プッシュ」と呼ばれ、これを行うには次のコマンドを実行します:
git push -u origin --all
-u
オプションを指定すると、Gitは上流ブランチの追跡を行い、リモートリポジトリとローカルリポジトリのコミット履歴に差異が生じた場合はそれを知ることができます。--all
オプションは、ローカルのブランチをすべてリモートリポジトリにプッシュすることを指定するものです。
また、--tags
オプションを指定して、ローカルのタグを Bitbucket リポジトリにプッシュする必要があります:
git push --tags
以上で、Bitbucket リポジトリは実質的にローカルリポジトリのクローンになりました。Bitbucket のウェブインターフェイスでは、すべてのブランチにおけるすべてのコミット履歴を確認することができます。
チームメンバーとのリポジトリの共有
次にするべきことは、Bitbucket リポジトリのURL をそれにアクセスする必要のある開発者と共有することです。Git リポジトリの URL は、Bitbucket のリポジトリホームページからコピー・ペーストすることができます:

リポジトリを非公開に指定してある場合は、Bitbucket ウェブインターフェイスの Administrationタブで、チームメンバーへのアクセス許可を設定する必要があります。左のサイドバーにあるAccess managementリンクをクリックして、アクセスを許可するユーザーまたはグループの管理を行います。

別の方法として、Bitbucket に用意されている招待機能を利用して、他の開発者によるリポジトリへのアクセスを許可することも可能です。招待された開発者にはリポジトリへのアクセスが自動的に許可されるため、アクセス許可設定を行う必要はありません。
他の開発者がリポジトリの URL を取得すると、git clone
コマンドを使用してリポジトリをローカルマシンにコピーし、プロジェクト開発作業を開始することができます。例えば、他の開発者が自分のローカルマシン上で次のコマンドを実行すると、プロジェクトの内容を反映した新しい Git リポジトリが
ディレクトリに作成されます。
git clone https://<username>@bitbucket.org/<workspace-id>/<repo>.git
Git ではなく SVN でコミットを継続
ここまでの操作で、ローカルリポジトリを Bitbucket リポジトリ にプッシュすることや、チームメンバーがそれぞれのローカルマシーンにリポジトリをクローンして Bitbucket リポジトリを使用することができるようになりました。即ち、Git を用いたコラボレーションを開始することができます。しかしながら、全員が切り替えに対応できるようになるまでは、コミットは引き続き SVN リポジトリに対して行うべきです。
Git リポジトリに変更が加えられる唯一のケースは、元の SVN リポジトリとの間で前のページで説明した同期処理が行われた場合です。即ち、あらゆる場合において Git リポジトリは (ローカルリポジトリもリモートリポジトリも) それへのアクセスがリードオンリーであるということです。開発者は Git の試用を行なうことが可能であり、また Git リポジトリをビルドプロセスに適用することもできますが、しかしながら変更を正式にコミットする際に Git を用いることは回避するべきです。
概要
このステップでは、Bitbucket リポジトリをセット アップして、変換した Git リポジトリを他の開発者と共有します。皆さんは、これまでに、Git ワークフローに記述されている Git ワークフローの実装に必要なツールをすべて獲得しているはずです。SVN リポジトリとの同期とその結果発生する Git コミットの Bitbucket 経由での共有は、開発チームが Git に納得するまでいつまででも続行できます。その後、SVN リポジトリを廃止して移行プロセスを完了できます。