Close
ソフトウェア開発者の作業の様子

エンタープライズ コンテンツ管理 (ECM) ガイド

エンタープライズコンテンツ管理とは?

従来、エンタープライズ コンテンツ管理 (ECM) はバック オフィスに限定されており、無数のコンテンツを集中管理するための非構造化の方法として扱われてきました。しかし、ここ数年、ECM はビジネスにおいてよりインタラクティブな役割を果たすものに変化しています。

デジタル化がニュー ノーマルとなっている今、紙はほぼなくなりつつあります。機械学習、クラウド技術、モバイル機能がビジネスに新たな機会をもたらし、ビデオ、オーディオ、ソーシャルといった新しいタイプのコンテンツが登場し、従来の ECM の境界線を曖昧にしています。その結果、多くの業界のオピニオン リーダーが、今こそ ECM の定義を見直すべきではないかと考えています。

今日のビジネス環境では、ECM とは何か、それがどのような役割を果たすかについて複数の定義がありますが、Atlassian では、エンタープライズ コンテンツ管理 (ECM) は、企業のプロセスやビジネス目標を支援するために、社内の情報の管理と適用をデジタル方式で行うコラボレーション プロセスとして定義しています。これにより、情報にアクセスしやすくなり、コンテンツ ライフサイクルのどの時点においても情報の有益性が最大になります。適切な ECM システムを使用することで、プロセスを自動化し、生産性を高め、複数のチームが業務横断的に協力できるようになります。

diagram-of-content-management-life-cycle

ECM ソフトウェア システムの仕組み

コンテンツはあらゆる場所にあります。ドキュメント、メール、スプレッドシート、プレゼンテーションなど、さまざまな資料がこれまでにないほど大量に作成されています。その理由は簡単です。一緒に働く人たちが世界中に増えれば増えるほど、情報の共有、それも正確な情報の共有が不可欠となるからです。このようなコラボレーションには、ドキュメントやファイルといったリソースへのすばやい共有アクセスが求められます。

こうしたコンテンツは、メール、ハードドライブ、はたまたあのファイルの中 – とにかくどこにでもあります。このような非構造化コンテンツの増加に伴い、大企業も中小企業もその管理に多くのリソースを注ぎ込み続けています。

ECM プラットフォームの基盤となる考え方はとてもシンプルです。組織内のすべての人が、決定を下し、プロジェクトを進め、できる限り効率的に働けるよう、必要なすべての情報に簡単にアクセスできるようにすることです。ECM が導入されれば、今までなぜこれについて考えた人がいなかったのかと思うことでしょう。

ECM を導入すると、紙の書類や関連する文書保管システムが不要になります。請求書、履歴書、契約書から書簡に調査報告書まで、エベレストのように山積みになったあらゆる書類をデジタル化して安全なリポジトリに保管できます。また、電子ファイルの管理にも有効で、コラボレーションと共有が促進されます。もう書類フォルダーはいりません。紙で手を切ることもなくなります。森の木々も安堵のため息をつくことができます。

成長する芽

しかし、ECM はクールで環境にやさしいだけの文書管理システムではありません。ECM は、情報の入手からパブリッシュやアーカイブまで、コンテンツのライフサイクル全体に及ぶプロセスです。さらに、決められた保存期間が経過したファイルを削除します。使い道のない大量のファイルでスペースをいっぱいにしたい人はいませんよね?

堅牢な ECM システムは、目的のコンテンツを探し出すための無駄な労力を排除するのにも役立ちます。一元管理された場所で既存の電子ファイルを管理し、ドキュメントのメタデータをフォルダーに保管します。こうすることで、必要な人が必要なときに簡単にコンテンツを利用できます。アクセス権を持つユーザーは、特定の文書を全文検索することも可能です。デバイスに関係なく、必要なときにどこからでも、閲覧、編集、印刷できます。また、保存されているドキュメント内の単語やフレーズも検索できます。

あらゆるビジネス機能がコンテンツ管理を必要としている

当初、ECM は紙の書類を減らし、文書管理を合理化するためだけに使われていましたが、その役割はどんどん大きくなっています。

強力な ECM ソリューションは、ドキュメントのライフサイクル全体を通して、管理に関連する時間とコストを削減し、記録保存ポリシーを遵守します。お客様からの問い合わせに対応する場合も、ECM なら指先ひとつですぐに答えが見つかります。また、コピー印刷、ドラッグ & ドロップ、書類の手渡しなど、手動でのタスクも自動化します。ファイルやフォルダーへのアクセスを制限することで、セキュリティも高まります。さらに、人事情報へのアクセスを HR 担当者に制限するなど、個々の部門でアクセス権を管理できます。

複数の種類ができた ECM

現在、「ECM」という頭字語はさまざまなサービスを意味するようになっています。ECM が会社にどう役立つかを具体的に把握するには、以下の 3 種類の ECM を検討してください。


  1. Web コンテンツ管理 (WCM)

    WCM を使用すると、Web サイトのルック & フィールを特定の主要メンバーで管理できます。WCM は、比較的複雑なウェブサイトと厳格なブランド ガイドラインを持つ組織によって利用され、ガイドラインに従うと同時に、サイトのコンテンツを簡単に更新、変更、公開できる手段を主要担当者に提供します。
  2. 共同コンテンツ管理 (CCM)

    CCM では、法律関係書類など、1 つのドキュメントに複数のユーザーがアクセスし、変更できます。CCM は、複数の関係者がかかわるプロジェクトを管理しなければならない組織に適しています。共同作業を容易にすると同時に、ドキュメントの最新バージョンの追跡や更新を可能にします。
  3. トランザクション コンテンツ管理 (TCM)

    TCM は、記録、紙の書類、デジタルファイルなど、さまざまな種類のコンテンツを繰り返し使用する組織向けに設計されています。TCM ソリューションは、さまざまなチャネルから取得したコンテンツを分類して保存します。また、適切なユーザーが適切なタイミングでコンテンツを入手できるようにし、ドキュメントが不要になったら削除する自動ワークフローを作成します。その間、他のアプリやデータベースとシームレスに連携しながら、社内全体ですべてのコンテンツを利用できるようにします。

ECM が非常に重要な理由

混沌に秩序をもたらします。現在のデータドリブンな世界では、これはとても重要です。

さまざまな業界やサービス部門で、効率的な企業規模のコンテンツ管理ソリューションが活用され、諸経費を最小限に抑えながら日常業務を向上させています。ECM は、重複したファイルや古くなった情報など、誰も必要としないコンテンツの除外に重要な役割を果たします。より実務的なレベルでは、業務で必要となる紙やその保管場所、郵便物の削減に貢献しています。

コミュニケーション不足のリスクを軽減する

組織の使命が何であれ、コンプライアンス違反、収益機会の損失、生産性の低下を招く恐れがある、その場しのぎのプロセスを排除するには、ECM が鍵となります。ECM は、情報のボトルネックをなくし、より明確にコミュニケーションを図れるようにする重要なツールです。

安心感をもたらす

何よりも重要なことは、相互のつながりが増え続けるこの世界で私たちが直面する脅威に対し、ECM システムが防衛の最前線になり得るということです。ECM を導入すると、組織が保有するすべてのコンテンツを管理、監視できるため、主要担当者がデータ漏洩や金融詐欺に効果的に対処し、被害を予防できるようになります。

コンテンツ管理ツールの重要な役割

コンテンツボックスのアイコン

本当に必要なものだけを保存し、不要なものを除外することでストレージコストを削減

管理サーバーのアイコン

ストレージコストの削減、および資料の電子化によるワークフローの改善を通して、運用コストを削減

アイコン: 歯車

適切な情報を適切なタイミングで適切な人に提供し、定型業務を自動化することで生産性を向上

メッセージの吹き出しのアイコン

お客様が必要としている情報に担当者が簡単にアクセスできるようにすることで、顧客満足度を改善

植物のアイコン

意思決定プロセスの改善により、コスト削減、効率性の向上、そしてタイミングを逃さず機会を捉えることが可能に

セキュリティ保護のアイコン

アカウントバックアップ、アーカイブ、保護されたストレージ、ディザスタリカバリプロセスにより、何が起きてもビジネス活動を継続可能

本題に入りましょう: 実装

ECM の導入を決断する前に、いくつかの質問について考え、現状を把握しましょう。

  • 短期的および長期的なビジネス目標について考えてください。ECM システムは、それらの目標の達成にどう役立つでしょうか?
  • 現在、あなたの組織では、さまざまな種類のコンテンツをどのように管理していますか?
  • ECM ソリューションが導入済みの場合、そのソリューションはどのように機能していますか? 既に実施されているビジネスプロセスを詳しく図式化してください。
  • 企業全体、社員間、部門間、およびシステム間で、情報はどのように共有されていますか?
  • 独自のコンテンツ管理ソリューションを作成している部門または事業部はありますか?
  • 独自のやり方で IT を運用しているという理由で、変革に抵抗しそうな部門はありますか? (これは彼らを引き入れる良い機会です!)
  • ECM の導入は、コンテンツの移動、変更、閲覧、作成など、コンテンツにアクセスする必要があるすべての人を確認する良い機会です。社内ユーザーかお客様か、サプライヤーかパートナーかを問わず、関与するすべての人が重要です。

これらすべてを明確にすることにより、法令や企業ガイドラインを遵守し、社内のあらゆる組織のニーズを満たす、安全なコンテンツ管理システムを構築、管理することが可能になります。

コンテンツと管理のニーズを分析する

デューデリジェンスを行ったら、コンテンツの作成方法と保存場所について結論を下します。誰にアクセス権を持たせるか、個人や部門によるデータの取得方法はどうするか、誰がいつ、何を必要とするかを考えます。

この分析から、現在の環境を明確に把握し、データを分類できます。この方法は、特定の情報にアクセスする必要がある人、保存する必要があるコンテンツ、削除または破棄可能なコンテンツの判断にとても効果的です。

ここまで来たら、必要な ECM ソリューションはどのタイプか、はっきりしているはずです。目標達成に役立つベンダーやソフトウェアの選定を始めることができます。

データを分類し、誰がいつ、どこでそのデータを必要とするかを把握することにより、すべての関係者のニーズを満たす ECM プラットフォームを導入できます。その結果として、ユーザーによる受け入れが進み、円滑に変革を実施することができます。

ECM ソリューションを導入する際は、たとえベンダーの助けを借りていても、通常の業務プロセスに混乱が生じます。円滑な導入に役立つ便利なチェックリストをご紹介します。

  1. まず、重要な部分に焦点を当て、優先順位を付けます。少なくとも最初は、対処の必要がない問題やすぐに価値をもたらさないものは考慮しないようにします。
  2. ECM ソリューションがもたらすメリットを全員に示します。想定される結果を、組織の財務条件や業務条件に基づいて数値化します。
  3. 賛同を得ます。全員を関与させましょう。「全員」とは、影響を受けるすべての部門に所属するすべての人です。通常は、これが「全員」を意味します。
  4. 話し合います。新しいプラットフォームに対するビジョン、望ましい結果、期待値など、たくさん話し合います。また、話を聞くことも忘れないでください。フィードバックの機会を多数設けてください。
  5. 何が必要かを判断します。サービスプロバイダーと相談してください。新しいソリューションでは、ノートパソコンからスマートフォン、ネットワーク、クラウドソフトウェアまで、特定のハードウェアやインフラストラクチャが不要になるかもしれません。
  6. 導入します。導入プロセスに専念するチームを 1 つ作り、チームのメンバーにすべてを詳しく説明します。すべてのステップに彼らが関わるようにしてください。
  7. ルールを決めます。情報へのアクセス権を持つ人を選び、利用方針を確立します。推奨されるデータのライフサイクルや、不要になった場合の破棄手順なども決めます。
  8. ローンチの前にテストします。新しいプラットフォームの準備が整ったら、実際の環境でテストするユーザーグループを選びます。その後、テスト結果に応じて微調整やトラブルシューティングを行い、問題を解決します。
  9. 落ち着いた気持ちを保ちます。新しいテクノロジーやプロセスには、ならし運転の期間が必要です。時間をかけてください。組織のメンバーに慣れてもらい、進んで調整を行いましょう。定期的にミーティングをスケジュールし、関係者全員の意見を確認してください。

優れた ECM ソリューションが今すぐ実現するもの

ECM ソリューションを新規導入する場合でも、既存の ECM ソリューションを改善する場合でも、コンテンツの管理方法を改善するだけでは不十分だということに注意してください。組織全体のユーザーが以下を実行できるようなシステムを設計し、導入します。

  • コンテンツを安全に保存、保管する
  • どこにいても必要なときにコンテンツを検索、使用する
  • 容易にアクセスでき、日常的に効率性と生産性が向上する
  • 任意の場所から任意の種類のファイルを取得し、自動的に分類、保存する
  • ECM プラットフォームとその他すべての企業システムを簡単に切り替える
  • ECM ソリューション内で情報がどのように使われているかをレポートする

エンタープライズ コンテンツ管理の未来

ソーシャル コラボレーション ツールを ECM へのアプローチに組み込むチームが増えています。これは、ECM が単に企業情報を扱うだけでなく、情報の取得、保存、活用に全員が関与する統合的な文化や対応するプラットフォームを構築することに重点を置いているためです。

デジタル エコシステムで培われるコンテンツ

2017 年のマジック クアドラントのレポートで、Gartner はこの分野を評価する新しい用語、コンテンツ サービス プラットフォーム (CSP) を作り、これを「エンタープライズ コンテンツ管理 (ECM) マジック クアドラントの進化版」と表現しています。

この「進化」からすぐに考えられるものが 2 つあります。1 つは、ECM は単なるコンテンツ管理に限定できないということです。これには管理、組織、検索性、アプリ、コンポーネントなど、より広範囲の責任が含まれます。もう 1 つは、これまで非構造化であったものにインフラストラクチャを提供するデジタル プラットフォームと、機能性と柔軟性の両方を備え、コンテンツのライフサイクルをよりインタラクティブにするツールを備えておくことが、チームにとって必須になりつつあることです。

デジタル化に向け、統一されたプラットフォーム内で ECM ツールとプロセスを合理化することによって、チームは期限を守り、さらに重要な点として成長の機会を得ることができます。

境界のないコンテンツコラボレーション

かつては自己完結型のシステムやリポジトリだったものが、今では進化する顧客のニーズに応じて継続的に適応できるオープンなサービスになっています。ソーシャル コラボレーション ソフトウェアは、チームがコンテンツや情報を日々の業務に組み込む方法に大きな影響を与えました。チームの認識を同じくし、リアルタイムでコラボレーションし、統一されたナビゲーション プロセスを活用するための機能は、ECM ソフトウェアの有効性にさらに大きな違いをもたらします。

ECM ソリューションは、さまざまなアプリケーションにまたがるオープン コンテンツ プラットフォームによって障壁を取り除く手段を提供し、チームがインタラクティブな製品群の利点を活用できるようにします。

クラウド ECM のデプロイ

クラウド、モバイル、分析テクノロジーの進歩、そしてソーシャル コラボレーション ツールの継続的な統合により、ECM ツールへの期待はさらに大きくなっています。作成され、保存されるコンテンツの量は膨大であり、時間の経過とともに向上するこうしたテクノロジーにより、エンドユーザー間で優れた可用性やモビリティのニーズが高まるでしょう。これらの兆候はすべて、ECM の有効性を最大化するための主な手段として、クラウドのデプロイの方向性を示しています。

ECM をクラウドベースのプラットフォームに移行することで、組織は先行実装やインフラストラクチャのコストを回避し、人件費を削減し、最終的なコンテンツのストレージと管理にかかる TCO を削減できます。

大幅なコスト削減に加え、ECM の使いやすさとアクセシビリティの向上を目指す組織は、クラウドのデプロイがまさにこれを可能にすることに気付きます。ECM ツールをクラウド化することで、チーム メンバーは外出先や在宅勤務でも簡単にコンテンツを保存、検索、活用できるようになります。

自動化を導入していない場合は急務となる

作業プロセスの改善に関するあらゆる会話には、自動化や機械学習のトピックが意図的に組み込まれているように感じられますが、ECM にとってはこれらが自然な対応策になります。

ドキュメントの取得、整理、保存、継続的な管理を促進するために必要な時間とリソースを考えると、なぜインテリジェントな自動化がチームの情報活用方法に大きな影響を与えるのかを理解しやすくなります。初歩的なタスクを省き、処理時間を短縮します。また最も重要な点としては、適切な情報を適切な人に適切なタイミングで提供することです。そしてメタデータを取り込み、分類する機能は、組織にとってますます重要になってきています。通常であれば手間と時間のかかるプロセスでも、競合他社に対する優位性を進化させることができるのです。

Confluence ECM ソフトウェアの無料評価版を試して、ECM がいかに組織のコンテンツ管理に役立ち、効率性や生産性を高め、コラボレーションを促進するか、ぜひご確認ください。