Team’21 発表要点とアトラシアンのビジョン(その2)

Jira ブランドのポジショニング変化

Team21

現在Team'21 の各セッションは、有償登録することで、2021年12月31日まで、日本語字幕付きでオンデマンドで視聴いただくことができます。本投稿で触れた話は、ソフトウェアチーム関連の製品マーケティングを統括するSean Regan とJira Softwareのプロダクトマーケティングを統括するClaire DrumandによるPower Session「Jira brings agile to all teams」の内容を咀嚼して、重要なポイントを補足して解説したものです。

前回、「Team’21の発表要点とアトラシアンのビジョン」の中から、1つ目のポイント、クラウドカンパニーとしてのさらなる投資と新製品の発表について解説しました。

今回は2つ目のポイント、アトラシアンの旗艦製品であるJiraのポジショニングの変化について書きたいと思います。

「より早く顧客に価値を提供すること」を目指したアジャイル開発の思考から、開発と運用がお互いに協調することで、エンドユーザーへの価値提供をさらに早められるとしたDevOpsというムーヴメントが生まれたように、もともとアジャイル ソフトウェア開発を支援するプロジェクト管理ツールだったJiraは、6年ほど前に運用チームのためのサービスデスクとして特化した製品「Jira Service Desk」※ の登場で、2つの製品を包含するファミリーブランドとなりました。以降一貫して開発(Dev)と運用(IT)が緊密に連携したアジャイルな働き方を支援するブランドとして、その歩を進めてきました。

※ もともとJiraと呼ばれていたソフトウェア開発プロジェクト管理ツールは、Jira Softwareと名称を変更。Jira Service Deskはインシデント管理機能を統合し、ITSMソリューションとして成長したことに合わせて現在は、Jira Service Managementとリブランディングされています。

その間、「Software is eating the world」という言葉であらゆる産業がソフトウェアに代替されることを端的に表したマーク・アンドリーセンの言葉は現実のものとなり、テクノロジーを基盤に生まれた多くのスタートアップ企業による「破壊的創造」が、既存の大企業を脅かすようになりました。多くの経営者が、もはや企画と開発と運用、つまりはビジネスとITが分離した形で組織運営を行っていたのではダメなのだということに気づきはじめています。

コロナ禍がその動きに拍車をかけたこともあり、ここにきてアジャイルは、「システム開発の話」ではなくなりました。ビジネスを形づくるあらゆる関係者が、組織の垣根を超えて協働し、顧客と対話し、変化に対応しながらいち早く価値を生み出すビジネス手法として、既存の大企業からも注目されるようになっています。

将来に向かうJiraのビジョンは至ってシンプルで、「あらゆるチームのアジャイル コラボレーションのためのバックボーンとなること」です。バックボーンとは、直訳すると「背骨」ということですが、一般的には物事の支柱や基幹、IT用語的には主要通信回線を指したりします。ここでは、組織を横断したアジャイルなコラボレーションのための中心的な支えになることを目指している、といったところでしょうか。

あらゆるビジネスは、大きく3つの立場のが人が関わっていると言えるでしょう。製品やサービスを「作る」チーム、それを「売る」チーム、そして「運用とサポート」を行うチームです。そして、それぞれのチームには、異なる言語、お作法、要件があります。各チームの自律性を維持しながらも、全体の足並みを揃え、組織を横断した透明性を確保する。それがアトラシアンがJiraブランド全体で実現しようとしているビジョンです。

Jira Softwareは、アジャイルを採用している世界中のソフトウェア開発チームに支持され続けているプロジェクト管理ツールで、「作るチーム」専用に構築されています。アトラシアンは、これからも継続してこのミッションに投資をしていくでしょう。今回は、製品開発のアイディアが、実装に向けた開発チームのバックログに乗る前の段階を支援するJira Product Discoveryや、Jira Softwareとアトラシアン製品だけでなく、サードパーティー製品も組み合わせたDevOpsツールチェーンのセットアップを容易にするOpen DevOpsが発表されていることからもその姿勢は伺えます。

「売るチーム」には、今回Poin AプログラムからリリースされたJira Work Management。そして、「運用・サポートチーム」には、ITサービス管理とインシデント管理にまとめて対応するJira Service Management。今後は、新しく3本柱となったJiraで、ビジネスドメインとテクノロジードメインがビジネス駆動型のワンチームとしてゴールに向かう支援をしようという訳です。

あらゆるチームに広がるJiraを説明した英文ブログの翻訳記事はこちらでご覧いただけます。

しかし、異なる立場や役割を持ったチーム向けに、それぞれの業務の遂行を支援するツールは、さまざまなベンダーから提供されています。ソフトウェア開発向けのプロジェクト管理ツール、ビジネスユーザー向けのタスク管理ツール、保守・運用部門向けのITSMツール、それぞれの分野である程度のユーザーベースを抱えるツールはいくつもあります。このような市場の状況において今回発表された新生Jiraの何が重要なのかというと、決して「ビジネスユーザー向けに特化したJiraを作りましたよ!」という話ではありません。それぞれのユーザーのやり方にマッチしたUIや機能、操作方法を備えつつも、そこはやはりアトラシアンのお家芸でもあるアジャイルの根底にある考え方を全ての製品に適用し、ソフトウェア・ファーストの時代に適した形で全てがアラインする(常々、英語のAlignというのはバチっと決まる日本語化が難しいと思っているのですが、連携・整合性・整列、その全てが融合したような感覚とでも言いましょうか)ように、個別最適化はもちろんのこと、イチから全体設計を見直し、ビジネス駆動型のワンチームのエンド・ツー・エンドで、仕事が流れるようにしたことにあると思います。

とはいえ、Jiraを使ったからと言って、いきなり組織がアジャイルになるわけではありません。実に、アジャイル トランスフォーメーションの一番難しいところは、多様なチームが組織を横断してコラボレーションする手法であり、アトラシアンはJiraを通して、その問題を解決することにコミットしています。次回は、具体的にどうやって?という話と、それを可能にするテクノロジーについて書きたいと思います。

2021年5月19日(水)に開催されるアトラシアンコミュニティのオンラインミートアップでは、Team'21の振り返りが取り上げられる予定です。ご参加者には何と!!!Team'21 全ての動画を無料で視聴(一般価格$200)できるパスコードが配布される予定です。ぜひこの機会にご参加ください。