Team’21 発表要点とアトラシアンのビジョン(その3)

アジャイル コラボレーションを実現する手法とテクロノジー

Team21

前回は、Team'21 で触れられたトピックから、Jiraのポジショニング変更について解説しました。

Team'21 振り返り最終回となる今回は、総括としてJiraの目指す世界「アジャイルコラボレーションのバックボーンとなること」について、共通基盤としてのJiraを構成する個々の要素がどのようにつながって組織を横断したコラボレーションを実現するのかと、それを下支えする注目のテクノロジーについて、3つの観点から紐解いていきたいと思います。

データ活用

Jiraに接続されたアトラシアン製品やサードパーティー製品から生成されたデータは、Jiraのデータレイヤーとして蓄積されます。このデータは、「contextual insights(文脈のあるインサイト)」としてユーザーに意味のある形で提示されます。文脈のあるインサイトとは、今ユーザが見ている画面や行っている動作の内容に関連する情報を提示することを意味します。例えばJira Softwareでは、まずバックログのビューで作業をする際、過去のスプリントでどれだけの課題を完了したか等、次のスプリントに向けたプランニングに役立つ情報が並列で提示されます。ボードでは、スプリントの進捗状況などを表示することで、コミットメントに対してどんな状況にあるのか瞬時に判断できます。デプロイのビューでは、どれくらいリリースしているか、アイディアからデリバリーまでどれくらいかかっているのか等、利用しているツールチェーン全体から生成されたデータより、デプロイメントに関する情報を確認できます。

蓄積されたデータから意味のあるデータを形成し、ユーザーにとって意味のあるタイミングと場所で提示する「文脈のあるインサイト」の活用は、始まったばかりの取り組みで、今後のJiraプラットフォームの進化にとって注目すべきポイントです。Jiraには、サードパーティーも含め、統合されるあらゆるツールから生成されるデータがまだ山ほど眠っており、アトラシアンはこれを、BI(ビジネスインテリジェンス)とAI(人工知能)やML(機械学習)を使って、最大限に活用しようとしています。

弊社の動向をウォッチしてくださっている皆様の中には、少し前にChartioという米国を拠点とする会社を買収したことを記憶されている方もいらっしゃるかも知れません。Chartioは、いわゆるBI(ビジネスインテリジェンス)分野に相当するサービスですが、今これをアトラシアンのプラットフォーム全体に組み込むべく、様々な角度から検討が進められています。また、アトラシアン製品の「オープン」な姿勢は常に変わらないため、すでにお使いのBIツールがあれば、それを介したアクセスもできるようになるとコミットしています。

次にAIとMLを使ったデータ活用についてですが、Atlassian Smartsという技術をご存知でしょうか。昨年秋頃クラウドプラットフォームに構築されたアルゴリズムと機械学習テクニックによるアプリケーションで、これまで製品の随所に予測を活用した便利な機能を実現してきました。例えばJiraやConfluenceで特定のタスクを割り当てるべき担当者を、86%の精度で予測して提示することができます。これは小さな例ですが、積み重なると1日に何度も繰り返す反復的な作業にかかるスピードを劇的に削減することができます。または、自社のサービスに重大な問題が発生した際を想像してみてください。いくつもの問い合わせチケットの中から類似の問い合わせを探し出してまとめ、影響のあったお客様へのアップデートを自動化することで、一気に多くのチケットに対応するなどが実現できています。今後はAtlassian Smartsを蓄積されたデータに適用し、さらなるデータ活用を進める予定です。

自動化

Jiraにおける自動化機能は、Jiraで管理されるプロセスやワークフローの自動化を可能にする強力な機能です。何をきかっけに(トリガー)、どのような条件で(条件)、どのような操作を実行するのか(アクション)を定義したルールを作成することで、例えば自動的に担当者を割り当てたり、成果物がリリースされた際にSlackやTeamsにお知らせするなど、トリガー、条件、アクションの組み合わせであらゆる操作を自動化することができます。

ルールはノーコードで作成可能ですが、この度ユーザーの利便性をさらに増す「Automation Playground」と呼ばれる自動化ライブラリが発表されました。このライブラリは、予め設定された自動化ルールをテンプレートとして提供するもので、安全な環境で実際に触ることでき、気に入ったものが見つかれば、自分の環境にコピー&ペーストするだけですぐに活用することができるものです。

自動化機能はこのように、反復的な操作を便利に自動化して大幅な時間削減に貢献するのは勿論なのですが、役割や作業方法、作業内容の異なるあらゆるチームがJiraをバックボーンとしてコラボレーションする際、強い自律性を与えながらも、組織全体としての協調を確保するのに重要な役割を果たします。それぞれのチームは、自分に適したツールと向き合いながら個々の作業に取り組むだけで、ビジネスプロセスのエンドツーエンドが同期され、自動的に流れます。

わかりやすくするために具体的なストーリーで解説します。あなたは、顧客向けにサービスを提供している企業の営業だと思ってください。そのサービスへの機能追加を待っている顧客がいて、それさえあればさらなる大口契約が期待できる状況にあります。通常であれば、メールや電話、チャットで製品担当に問い合わせし、たびたび状況がどうなっているのかを確認することでしょう。他にも、同様の機能を欲しているお客様がいて、サポート窓口に機能改善リクエストが上がっている状況です。Jiraの自動化機能は、互いに依存関係にある組織を横断した作業を、スマートに流れるようにしてくれます。顧客から機能改善リクエストがあがると、自動化機能がそのリクエストを判定し、適切なプロダクトマネージャーを担当としてアサインします。そのプロダクトマネージャーは、別途Jira Product Discoveryでプランしていた作業の中から関連のあるものの優先順位をあげ、次の実装に取り組む判断をします。すると、開発チームへ実装に向けてJira Sofwareに課題が作成されます。該当機能がリリースされると、全ての関係チケットが更新され、Slack等を使って営業を含めた関係者に通知がされ、マーケティング向けにはJira Work Management内に、該当機能をお客様向けにプロモーションするためのタスクが作成されます。

このように、Jiraの自動化機能を組織を横断したワークフローに適応すれば、依存関係にある一連の流れが全て自動化され、製品部から、開発、サポート、営業、マーケティングなど、あらゆる組織が個々その役割に集中しながらも、全体協調が自動的に実現されます。

ロードマップ

そしてロードマップがその全てを統合します。権限と責任が備わった自律分散型のアジャイルな組織では、それぞれのチームが迅速に判断して動くためには、組織のどこで何が起こっているのかを俯瞰的に把握できている必要があります。

Jiraファミリーでは、そのあらゆる場所ですべての仕事の透明性が確保されるように設計されていますが、特にロードマップがその役割を果たします。あらゆるチームが、それぞれの作業と、組織を横断した別のチームの作業の依存関係を確認したり、進捗をトラッキングすることができます。メールやチャットによる確認や、パワーポイントやスプレッドシート等の資料、ミーティングを待つこともなく、いつでも数クリックで、常に自動的に更新される最新の情報を得ることができます。


ここまで、Jiraプラットフォームがいかにして分散自律型組織のアジャイルなコラボレーションを支援するのか、3つの観点からお伝えしました。

最後に、これ以外に取り上げられていた特筆すべき内容と、見るべきセッションをピックアップしてまとめとしたいと思います。

注目アナウンスメント

  • 新規Jiraプロジェクトテンプレートとフォーム:開発者以外にとってプロジェクトの開始をより容易にするため、約30を超える新しいプロジェクトテンプレートと、標準で使える100以上のフォームを搭載。プロジェクトテンプレートは、用途別に設定されたプロジェクトを作成できる機能で、マーケティングキャンペーンや営業案件管理、財務の結末じめプロセス管理など、多くのテンプレートが用意されています。
  • Confluenceにこの先予定されている新機能:
    • Atlassian Smartを適用してパーソナライズされたアクティビティフィードとホームページ。
    • 組織外のゲストにスペースへのアクセスを許諾する外部コラボレーター機能。

必見セッション

  • Humans at the heart of teamwork: Mike Cannon-Brookes,Co-CEO and Founder, Atlassian.
  • The evolution of modern work: Mike Cannon-Brookes, Co-Founder and Co-CEO, Atlassian; Stewart Butterfield, CEO and Co-Founder, Slack; and Eric Yuan, Founder and CEO, Zoom.
  • Transforming the modern enterprise: Scott Farquhar, Co-Founder and Co-CEO, Atlassian.
  • Conversation with Shobz Ahluwalia, Peloton CIO: Scott Farquhar, Co-Founder and Co-CEO, Atlassian; and Shobz Ahluwalia, Chief Information Officer, Peloton.
  • Jira brings agile to all teams:Claire Drumond, Head of Product Marketing, Jira Software & Agile, Atlassian; and Sean Regan, Head of Product Marketing, Software Teams, Atlassian
  • The newest Jira: an introduction to Jira Work Management -Ron Levy, Group Product anger, Jira Software, Atlassian
  • Overview of Atlassian Open DevOps – Gareth Wham, Senior Product Manager, Atlassian
  • Scaling innovation with Atlassian Enterprise: Bala Venkatrao, Head of Product, Enterprise Cloud, Atlassian; Maggie Roney, Group Product Marketing Manager, Enterprise Migrations, Atlassian
  • Modern mindsets for work and life: Molly Hellerman, Global Head of Innovation Programs, Atlassian; Jill Ellis, All-Time Winningest Coach in U.S. Soccer History; Former Head Coach; and Katie Sowers, First Openly LGBTQ+ coach in the NFL.
  • How high-velocity Dev and Ops teams fuel digital transformation: Justine Davis, Head of Product Marketing, DevOps, Atlassian; Amita Abraham, Head of Product Marketing, IT Teams, Atlassian

この先、BI、AI、ML、ノーコード・ローコードを活用したアトラシアン製品の進化に注目です!

今夜開催されるアトラシアンコミュニティのオンラインミートアップにて、Atlassian Team 2021に関する振り返りが行われる予定です。参加者特典として、全てのセッション記録のオンデマンド配信が、通常$200のところ、無償でご視聴いただけるパスコードが配布される予定ですので、この機会にぜひご参加ください。