Team’21 発表要点とアトラシアンのビジョン

Team21

日本ではちょうどゴールデンウィーク中になってしまいましたが、アトラシアン最大の年次カンファレンスが、4月29日〜5月1日の3日間に渡ってデジタルイベントとして配信されました。

もともとAtlassian Summitという名称のいわゆるユーザーカンファレンスとして2009年から開催されていた同イベント。10年以上、ユーザーの皆様向けの製品カンファレンスとして運営されてきましたが、近年のアトラシアンの方向性、つまり、ユーザー以外も含め、「チーム」=あらゆる職務や役割をもった人々のコラボレーションを支援する製品以外のプラクティスも含めたインダストリーイベントとしてのポジショニングをより明確にするため、今年から「Team」というイベント名にリブランディングされ、Team+年の形(今年はAtlassian Team 2021、省略表記: Team'21)で呼ばれるようになりました。今後このTeamを親イベントとして、テーマや対象毎にサブイベントが展開されていく予定です。

今年のTeam'21では、6つの基調講演と個別のアトラシアンソリューションを掘り下げる「Power Session」、お客様事例やユースケースなどをテーマとした「Breakout」そして、製品機能やTips等、テクニカルに深く解説する「Demo」セッションなど、多くのセッションが配信されましたが、ここでは発表された内容の要点を掻い摘んで取り上げつつ、そこから見えるアトラシアンの今後の方向性について書いてみたいと思います。

今回のイベントで伝えられたことは、大きく分けて3つに分類できるのではないかと思います。

  1. クラウドファーストカンパニーとしてのさらなる投資と新製品
  2. Jiraブランドのポジショニング変化
  3. アジャイル コラボレーションを実現する手法とテクロノジー

クラウドファーストカンパニーとしてのさらなる投資

アトラシアンがオンプレミス製品の提供を大規模運用向けエディションに絞り、この先クラウドサービスの提供により注力していくことを発表したのは昨秋のこと。Co-Founder 兼 Co-CEOの一人、Mikeによる基調講演でも、最近の各クラウド製品に行ってきた機能エンハンス、セキュリティの強化、より大規模利用のサポートへ向けた取り組みが語られた後、いくつかの発表がありました。

  • データレジデンシー機能の提供:Jira Software、Jira Service Management、Confluenceの全ての有償クラウドサービスプラン(Standard, Premium, Enterprise)でデータレジデンシーを管理可能になるのと同時に、今後データの保管場所として選択可能なリージョンを拡大し、オーストラリア、カナダ、ヨーロッパのさらなる追加と、日本(!!!)を発表。
  • Atlassian Point Aー アトラシアンの次世代製品をお客様と共創するための新しいプログラム「Point A」の発表。Point Aは、アトラシアンの社内公募制で出てきた新製品アイディアの中から厳選され、PoC(Proof of Concept)を経たものの中からさらに選抜された製品をPoint Aプログラム参加製品として、プログラムに参画されているお客様と一緒にアルファ版から完成まで導いていく、新しい製品開発の形を実現したプログラム。第一フェーズとしてプログラム配下で開発が進められている(または既にリリースされた)のは、以下5つの製品。
    • Jira Work Management ー簡潔に言うならば、ビジネスユーザー向けに最適化されたJira。もともとソフトウェア開発チーム向けのプロジェクト管理ツールとして広く使われているJira Softwareの根底にある「アジャイル 」の考え方を、ビジネスユーザーの業務内容や言語、やり方に合わせてあらたに作り直された製品。マーケ、営業、人事、経理等、さまざまな部門向けに予め構成されたプロジェクトテンプレートを備え、プロジェクト全体の進捗を確認するための多彩なビュー(「ボードビュー」、「リストビュー」、「タイムラインビュー」、「カレンダービュー」)と、ノーコード・ローコードのフォーム作成機能が備わっている。Jira Work Managementに関する詳細はこちらのブログを参照。Jira Work Managementはこのイベントで正式リリースを発表しており、既にJira(製品種別問わず)を使用している場合、Jira Work Management も利用可能となっている。スタンドアロンサービスとして利用されたい場合、10名まで無料で使えるFreeプランと、Standardプラン(1ユーザーあたり月額480円〜)が用意されている。
    • Jira Product Discovery ー プロダクトマネージメント業務における製品やサービスのコンセプト考案フェーズに特化したプロダクトマネージャー向けツール。プロダクト戦略の策定・立案に役立つ様々なデータを収集したり、影響度による優先順位付け、ステークホルダーの巻き込みなどを行う単一の場所として機能し、アイディアや仮説がバックログになる前の段階を支援。Jira Product Discoveryは現在アルファ版がリリースされている。
    • Team Central ー プロジェクトに関する情報を必要とする企業や組織内のあらゆる人に対して、プロジェクトの状況をアップデートすることができるサービス。もともとはアトラシアンが社内で必要としていたことから生まれたサービスで、基本的な考え方は、関係者へのシンプルな週次報告。プロジェクトオーナーが、プロジェクトのホームページを作成(プロジェクトの内容、目的、評価指標などを予め用意されている質問項目に答えるだけで作成可)し、週次で必要なアップデートを入力する。プロジェクトに関するレポートが必要な人は、確認したいプロジェクトをフォローすることで、週次のレポートを受け取ることができる仕組み。Team Centralは現在ベータ版がリリースされている。
    • Compass ーマイクロサービス、アプリ、ライブラリ等、分散した現代のソフトウェア開発におけるあらゆるコンポーネントと関係する情報の依存関係を単一の場所にまとめて確認することができる開発者向けツール。コードリポジトリ、クラウドインフラプロバイダー、監視ツール等からの情報を集約し、各コンポーネントの健康状態やセキュリティ、インシデントが発生した際の担当者やチャットルームまでを確認できる鳥瞰図を提供する。対応していないツールやサービスに関しても、アトラシアンのサーバーレスクラウドアプリ開発・実行プラットフォームであるForge(英語)を使って独自の拡張開発が可能。
    • Halp アトラシアンが近年買収した対話型チケット管理ソリューションで、SlackやMicrosoft Teamsを使って、メッセージベースで組織内のリクエスト管理をチケット管理することができる。Halpは既に一般向けに提供済み。 

Point Aの各製品は、ベータ版になると誰でも試してみることができる他、オープンなコミュニティが用意されています。アルファ版は現在招待制のため、待機リストへの登録が必要です。いずれも、Point Aのサイトからアクセスできます。

長くなってきたので今回は一旦ここを区切りとして、次の投稿でJiraブランドのポジションニング変化を取り上げます。

Team’21は、有償にて登録することで、2021年12月31日まで、日本語字幕つきのオンデマンド配信にて視聴することができます。本投稿で触れた内容は、アトラシアンのCo-Founder兼Co-CEOであるMike Cannon-Brookesによる基調講演「Humans at the heart of teamwork」にて確認いただけます。