世界のリモートワーク事情と日本にとっての最適解とは?

働くを再創造 ー どこでも働ける勤務形態を考える

みなさんは今、リモートワークをされていますか?

アトラシアンでは、新型コロナウィルスが感染拡大の様相を呈し始めた3月上旬頃から、全世界の約5,000人の従業員が早々と完全にリモートワーク体制へと移行し、以来ずっと試行錯誤を繰り返しながら、それぞれのチームに最適なリモートワークスタイルを模索し続けています。

私個人的には10数年前からリモートワークを実践する機会に恵まれてきたのですが、多くの日本企業では、リモートワーク、あるいは在宅勤務というと少し前までは「特別な事情を抱えた一部の人向け」という印象があり、会社によっては制度として準備されていても、日常的に実践してきた経験をお持ちの方はさほど多くはなかったのではないでしょうか。

それが突然、全世界的にソーシャルディスタンシングを余儀なくされ、これまで一切リモートワーク実施経験のなかった企業も含め、一斉に働き方の変化を強いられることになったわけです。リモートワーク未経験の企業はもちろんのこと、コロナ禍以前からリモートワークを企業文化としてきたアトラシアンでも、5,000人の従業員が一斉にリモートワークに移行し、継続していく中で初めて直面するいくつかの問題がありました。

そこでアトラシアンは、アメリカ、ドイツ、フランス、オーストラリア、日本の世界5カ国の企業勤めのナレッジワーカー5,000人以上を対象に、コロナ禍によるそれぞれのリモートワーク体験に関する実態調査を実施することにしました。

本調査結果のレポート全文は英語で提供しており、こちらからダウンロードできます。日本語の一部抜粋抄訳は、こちらから入手可能です。

その内容について、先日メディアの皆様向けにオンラインで説明会を実施しましたので、ブログを通して皆様にもその内容を共有いたします。


世界のリモートワーク事情と個人の体験に影響を与える3要素

まずはシドニーから参加した弊社のワーク・フューチャリストのドム・プライスが、アトラシアンの企業概要とコロナ禍におけるアトラシアン自身の体験を共有した後、今回の調査方法について、また主だった世界の反応などを取り上げて解説しました。(ちなみに、「ワーク・フューチャリスト」というのは耳慣れない肩書きかと思いますが、「働き方の未来を考える」ソートリーダーとして、社内外に情報発信をしています。)

この調査は、アトラシアンが企画し、PaperGiant社に依頼して実施。個々人の経験とチームレベルの経験の双方を深く理解するため、リモートインタビューと2週間にわたって日記をつけてもらうことで聞き取りを行ったことに加え、5,000名に対してアンケート調査を行いました。

そこで分かったことは、すべての人がそれぞれ異なったリモートワーク体験をしていたことです。そして「働き方の未来は在宅とオフィス勤務を組み合わせたハイブリッド型」であるという1つの仮説が見えてきました。また、人々のリモートワーク体験をどう考慮すべきかの手がかりとなる世界に共通する発見もありました。

そのうちの1つが、在宅勤務体験に影響を与える3つの要素です。

  1. 世帯の構成要素や両親や子供の面倒を見なければならない状況などを含めた世帯の状況
  2. 自身の業務について、単独で遂行できるものなのか、他者との関わりを多く必要とするのかなど、役割の複雑さ
  3. 身の周りの同僚や社外のコミュニティなどとの社会的なつながりを意味するネットワークの質です。

これらを組み合わせただけでも、在宅勤務を行っている社員ひとりひとりが違う体験を有することがお分かりいただけるかと思いますが、このような要素を考慮することで、従業員ひとりひとりの在宅勤務に対して必要な配慮を行う手助けになります。

調査では、共通点もあれば、国別の興味深い違いも明らかになりました。

例えば、ドイツでは、世界平均47%を上回る63%の人が「自分の勤務時間には柔軟性がある」と答えています。

フランスでは、リモートワークに苦労されていることが分かりました。「リモートワークに問題はなかった」と答えた人は、回答者の36%しかいませんでした。

パンデイックの影響を最も受けている国の一つアメリカでは、「オフィスに戻ることを不安に感じている」人は67%、「オフィスに戻りたい」と答えた人は12%しかいませんでした。

日本の調査協力者の日記からは、多くの企業がDXを推進しているにも関わらず、ツールやシステムが在宅勤務に対処する準備ができていなかった状況が伺えました。

調査から見る日本の課題と未来の働き方

ここから、アトラシアン株式会社の代表取締役スチュアート・ハリントンが日本の調査結果について詳しく取り上げて解説しました。

まずは世界の平均や国別の結果との比較から、日本の回答者はリモートワークをあまりポジティブに捉えていないことが分かります。

このような非常事態においてリーダーシップがいかに重要であるかは言うまでもないですが、日本の回答者で企業のリーダーシップに満足していると答えた人の割合は、世界平均の41%に対して18%しかおらず、調査した国の中で最も低い結果となりました。また、ワークライフバランスに満足している人の割合は、オーストラリアが70%と最も高く、世界平均は44%であるのに対して日本は31%に止まりました。さらに、リモートワーク 下でチームワークがうまく機能していると解答した人も17%と非常に低い結果でした。

このような結果は、今回のコロナ禍で、日本が他国とやや異なる経験をしていたことも 影響しているかもしれません。 調査では、コロナ感染拡大以前にリモートワークを実施したことがなかったと回答した割合は日本は半分以上の51%でした。他国では多くの人がコロナ前にリモートワークを経験していました。ところが、日本企業の多くは、4月の政府による緊急事態宣言発動を受けて初めて、リモートワークを導入したことがわかります。

また、リモートワークへの移行については、日本の回答者のうち48%が会社として十分に対応できていなかった、と答えています。グローバルの平均値は29%でした。日本企業の従業員が、自社の対応に不満を募らせていたこともわかります。

企業も十分に準備がないままリモートワーク導入に踏み切り、また、社員もリモートワークの経験もなく、いきなり自宅での作業を強いられたという状況にあったわけです。

日本の回答者の44%が、コロナ感染拡大という制約の中で、自宅で効率的に仕事をすることは難しいと回答しました。グローバルの平均は27%にとどまっています。この結果から、日本の社員が、自宅でパフォーマンスを上げることに苦戦していることがわかります。

コロナ禍におけるリモートワークは、日本企業に4つの課題を投げかけているとみています。

  1. 旧来のビジネスの進め方
    稟議書などの書類のやり取りや、「ハンコ」による承認によって、リモートワークへの移行が阻害されていています。
  2. IT化の遅れ
    日本ではいまだにオフィスでFAXをするといった、アナログな作業が根強く残っていて、デジタル化が遅れています。従業員にノートパソコンが支給されない企業もあります。また、ツールだけではなく、VPNの問題も、多くの企業にとっては課題と言えます。
  3. 企業文化
    日本企業では、オフィスに出社することや長時間労働することが評価される傾向があります。
    リモートワークの導入をきっかけに効率を重視するように変革に取り組む企業もありますが、一方で、自宅で隠れて仕事をする「シャドーワーク」や「サービス残業」などに置き換わってしまっているケースもあるようです。例えば、日本の回答者には、「夜中まで作業をした上で、翌朝に成果物を送る」などといった方法により、実際には自宅で長時間作業しているにもかかわらず、効率的に働いているように見せるために、長時間労働を隠しているケースもあるようです。
    日本の回答者の42%が、リモートワークでもオフィスと同じ働き方で時間を過ごすことと解釈しています。グローバル平均ではわずか28%でした。
  4. 働く環境
    日本の回答者の45%は、リモートワークの環境はオフィスに比べて良くないと回答していますが、グローバルの回答は34%にとどまっています。他国と比べると、日本の住環境はスペースなどの点であまりリモートワークに向いていないことも、従業員の満足度の低さにつながっていると思われます。

今後、日本ではどのような働き方を推進していくべきかを考えた場合、オフィスは引き続き重要な役割を果たすと考えられるものの、在宅勤務と組み合わせたハイブリッド型が最適なのではないかと思われます。

アメリカでは回答者の49%が完全なリモートワークを希望しているのに対して、日本の回答者の56%が、ハイブリット型の働き方が選択出来た方がよいと回答しています。これはグローバルの平均の46%よりも高い結果です。

柔軟性あるハイブリット型を継続することは、日本企業の社員には歓迎され、また、日本企業にとっては今後の備えにもなると言えるのではないでしょうか。


今回の調査結果から、日本企業に務めるナレッジワーカーは必ずしもリモートワークをポジティブに捉えていないことが分かり、リモートワークにおける課題も明らかになりました。これからは働く場所やスタイルに幅広い選択肢を与えるためにも、まずはすべての企業が本格的にデジタル化を進めて、リモートワーク体制を整える必要があると言えるでしょう。そのためには、ITツールの導入だけではなく、旧来の商習慣や対面・長時間労働を奨励する文化を変えていく努力も必要です。

アトラシアンでは、社内のオープンな情報共有や業務の進捗管理に役立つツールを提供しており、無償でお試しいただけます。また、リモートワーク下におけるチームワークの強化に役立つ文化の醸成を支援する各種リソースも提供しています。

皆さんのチームに最適なリモートワークスタイルを見るけるお手伝いをいたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。