効果的なITダッシュボードのために押さえておくべき4つのIT運用KPI

IT部門のスナップショットを構築し、スムーズなIT運用を維持

大量のデータを扱うチーム、特にIT運用チームにとって、データ活用は鍵となります。複数のデータソースから重要なIT関連情報を保存・整理し、統合されたアクセスしやすいプラットフォームに表示するインターフェースとして、「ITダッシュボード」があります。このダッシュボードは、プロジェクトマネージャーやCTO(最高技術責任者)、CIO(最高情報責任者)、その他のIT専門家が早い段階で問題を特定し、大事に至るのを防ぐのに役立ちます。

ITダッシュボードの重要な機能の1つに、レポート機能が挙げられます。特定のKPI(主要業績指標)を確認することで、ITプロジェクトの品質を監視したり、IT運用チームのコスト管理、問題解決、およびチケット管理の最適化につながります。IT運用に関する適切なKPIを備えたダッシュボードは、データを小さなグループに分割し、リアルタイムの視覚情報として扱うことで簡素化し、容易に管理できるようにします。また、これらのKPIは、これまでの取り組みにおいて良かった点や改善点を判断するのに役立ちます。

本記事では、IT部門の効果的なスナップショットを提供するダッシュボードを構築するにあたり、スムーズなIT運用を維持するのに重要とされる4つのKPIを紹介します。

1. 起票されたチケット数 vs クローズされたチケット数

保留状態のタスクが大量に積み上がる場合は大抵、既存のシステムに乖離があることを示しています。日々、起票されるチケットが貯まると、バックログが手に負えない事態となり、回復が困難になるので、チケットのバックログを定期的に追跡する必要があります。その一つの方法として、起票されたチケット数とクローズされたチケット数の差の比率を測ることで、バックログが増大しているのか、それとも減少しているのかを把握します。

この比較により、サポートのさまざまなレベルにおいて、チケットのワークロードをいかに効率的に管理しているかを確認できます。もちろん、バックログが無くなることはありません。バックログを可能な限り少なくすることが理想です。

特定のサポートレベルで未解決のチケット数が多く、特に1ヶ月以上バックログに留まっているチケットがある場合は、手を打つべきサインです。例えば、サポートレベル間のリソース配分を調整したり、問題解決にあたるスタッフを増員しても良いかもしれません。一般的に、このKPIを通して、全体的なITサポートの健全状態を確認することができます。

2. 重大なバグの数

新しいバグや問題は日常的に発生するため、社内(チーム)および社外(顧客)から報告された最も重大なバグを監視できるよう、ITダッシュボードに優先順位をつける必要があります。重大なバグとは、例えば、ユーザーがウェブサイトにログインするとクラッシュするといった、シャットダウンを引き起こす恐れのあるバグです。

顧客からのバグ報告が多いと、ブランドイメージが低下し、より良い体験を求めて顧客が競合他社に流れてしまう可能性もあります。

バグやその他の問題を早期に発見することで、その対応に費やすリソースが削減できることは、IT運用における常識です。IBMの調査によると、製品リリース後に発見されたエラーの修正コストは、設計段階で発見されたエラーの少なくとも4倍にのぼるとされています。

また、重大なバグを追跡することで、次の問いに対する答えを導き出すことができます。

  • バグが特に多く発生しているプラットフォームはあるか?
  • バグの解決にはどれくらいの時間がかかるか?
  • バグが顧客に提供されてしまう前に、品質保証(QA)の担当者は何らかの知見を提供しているか?

3. 平均修復時間(MTTR)

サポートメンバーが対応にどれくらいの時間を費やしているか疑問に感じたことはないでしょうか?そんな時、このKPIが役に立ちます。MTTRは、インシデントが報告されてから解決してクローズするまでの平均時間を測定し(関連するシステムが再びオンラインになった時点がインシデントの解決)、テストに費やされた時間を追跡します。ここから、IT部門のパフォーマンス(IT関連の問題をどれだけ確実に素早く解決できるか、など)を確認できます。

MTTRの算出には、特定の期間(年間、四半期、月間、週間など)にサポートスタッフが対応に費やした時間を記録し、その期間に完了した件数で割ります。

平均修復時間 = 修復に費やした時間 / 全修復件数

たとえば、ある企業が毎月約15時間を修復に費やし、その間に12件の異なるインシデントに取り組んだ場合、この月次MTTRは次の通りです:

15時間 / 12件の修理の合計 = 1.25時間

TIP
インシデント管理メトリクスに関する用語集を用意しています。ぜひご活用ください。

4. ITにおけるROI

ITにおけるROI(Return on Investments、投資収益率)とは、ITプロジェクトへの金銭的投資から得られる利益のことです。このKPIは、ITプロジェクト、運用、および技術への投資の効率性を測定するために使用されます。

IT部門はいかなる組織においても重要なグループであるものの、その運用が組織の財務状態を犠牲にするものであってはいけません。プライベートクラウドの利用など、最新ITの取り組みは非常に有望である一方、IT支出のコストと得られる利益が必ずしも一致するとは限りません。

ITのROIといったKPIを設定することで、財務的に実現不可能なプロジェクトやイニシアチブを中止し、コストを最小限に抑えることができ、技術的な戦略が改善されます。例えば、担当者が自動メールソフトのトラブルシューティングに費やす時間が、そもそもメールを作成する時間よりも長いことが判明したとします。この場合、より短時間でメールを作成できる使いやすいツールに置き換えれば良いと考えられます。

上層部にITのROIを示すことで、割り当てられたIT予算を確保し、さらに増やす方向に説得することもできます。自分が何に取り組んでいるのか、どこに投資しているのか、それがいかに賢い出費であるかを上長に示すことで、IT投資の重要性が正当化されます。

IT運用で把握すべきKPIを決めることは最初の一歩に過ぎない

IT運用におけるKPIを適切に設定することで、組織が期待するビジネスゴールとIT部門の足並みが揃うことにつながります。これにより、経営陣や戦略担当者が次のような問いに回答できるようになります。

  • ITプロジェクトが効果的かつ効率的に遂行されているか?
  • IT部門の担当者は、いかに生産的に問題解決を行えているか?
  • エンドユーザーや顧客は、ITサポートに満足しているか?

流行のデータ分析ツールを使うだけでは、成功は保証されません。ダッシュボードを導入する際には、ビジネスゴールにとって最も重要な情報を視覚化する必要があります。ITにおけるROIを測定するKPIを先に設定しなければ、データの意味を評価することも、プロジェクトの成功を測定することもできません。

ITダッシュボードを始めるためのツール

JiraConfluenceBitbucketをお使いの場合、Atlassian Marketplaceのアプリを使用してダッシュボードを拡充することができます。ここで、いくつかの例をご紹介します。

  • Quick Filters for Jira Dashboards: このアプリを利用すると、インタラクティブなJiraのダッシュボードにするための設定や、高度なガジェットの使用、リッチなレポートの作成、任意の数値フィールドからの値の集計を簡単に行えます。
  • EazyBI Reports and Charts for Jira: ITやソフトウェアプロジェクトのデリバリーに関連するデータを、可視化してレポートするための柔軟で包括的なツールです。Confluence向けのEazyBIも用意されています。
  • Dashboard hub for Jira – このアプリを使用すると、ITSM、DevOpsチーム、アジャイルチーム向けにあらかじめ定義したダッシュボードを作成することができます。
  • Custom Charts for Jira – カスタマイズ可能な円グラフや棒グラフ、折れ線グラフなどを、Jira上のインターフェースでドラッグ&ドロップで作成でき、使い方もわかりやすいツールです。

他にも、KPIやパフォーマンスを追跡するのに役立つアプリが用意されています。ぜひ、Atlassian Marketplaceで検索してみてください。