Atlassian Remote Summit 2020 – Day.1 Keynote レポート

アトラシアンの1年で最大の基幹イベント “Atlassian Summit”。2020年も昨年に引き続きラスベガスにて開催される予定でしたが、新型コロナウイルス(COVID-19)の拡大傾向を鑑み、参加者様、スポンサー各社様、および関係者の皆様の健康や安全面を第一に考えた結果、リモートでの開催へと形を変え”Atlassian Remote Summit”として4/2-3の2日間で開催しました。

本年は、アトラシアンでマーケティングを担当する中川が現地の様子をリアルタイムにレポートする予定でしたが、急遽日本語まとめレポートとして、重要なポイントを取り上げてお伝えいたします。さて、Day.1はKeynoteをはじめ、各種Breakoutセッション、製品Demoのセッションなど見逃せない豊富なコンテンツが用意されていましたが、ここではまずKeynoteで発表された大きなアップデートをまとめてお伝えします。

リモートの可能性

アトラシアン共同創設者兼共同CEOの一人、スコット・ファーカーが自宅からKeynoteを行う光景は少し新鮮。90カ国以上から数万人もの視聴者がいるというので驚きです。これは紛れもなく今までで最も多い数。リモート開催の無限の可能性を感じます。まずは世界中でアトラシアンのコミュニティを運営する全ての人、そしてCOVID-19の影響を受けながらもスピーディーにリモートへと舵を切り開催を実現できたこと、この実現に向け協力をいただいたパートナーおよびスポンサー各社様、そしてお客様へスコットが感謝の言葉を述べました。また、このイベントを視聴されている全ての方々とそのご家族に対して、誰も経験したことがない不確実な現状を共に乗り切ろうと、エールを送りました。

そこから、現代のビジネスがよりグローバル化し、旧来の「部署」という枠組みが消滅しつつある現状に触れ、ビジネスの成功にはもはや単一チームの最適化ではなく、チーム間連携が重要であると念押ししました。各自の抱える業務や、誰がいつまでに何をするのかを把握できるようにすることの重要性は、チームがグローバルであれ在宅勤務であれ分散している環境下では尚更重要であり、アトラシアンは、そのような分散チームの働く環境を支えるためのハブになると改めて表明。自社製品だけでなく、様々な企業の製品と柔軟に連携することによって、それを実現すると強くアピールしました。

そして、先日発表したCloudの全製品をユーザー数10名まで無料にしたことTrelloのビジネスクラスライセンスを教育機関向けに1年間無料にしたことを発表。初めてリモート環境でのコラボレーションに挑戦するチームや教育のリモート学習へのシフトに取り組む教育機関の支援に繋がると信じ、アトラシアンがこのような状況において、あらゆるチームがその可能性を最大限に解き放つ助けになれることを誇りに思うと話しました。

最後に、アトラシアン製品をフルに活用し700人でリモートワークを実践しているInVision社と、15万人でリモートワークを実践しているEngie社の例を紹介。参加の各企業に対しても、無償のアトラシアン製品を使ってリモートワークの実践に役立てて欲しい旨を訴え、基調講演のオープニングとしました。

NPOとアトラシアン

スコットが次にバトンを渡したのは、小児病院への募金を啓発する団体 “ALSAC” でマーケティングを担当するケリー・ドロズドさん。 “ALSAC”は、小児癌施設のランキングで全米1位となっているセントジュード小児研究病院の中の組織です。ケリーは、アトラシアンは15年間にわたって “ALSAC” を支えており、特にJira とConfluenceは大規模な組織を運用する大きなバックボーンを担っていると紹介しました。2007年に技術チームのメインのワークフロー管理製品としてJiraの利用が開始されて以来、今ではマーケティングや人事等も含む組織内のあらゆるチームへアトラシアン製品の利用が拡大。Confluenceも、全てをデフォルトでオープンな形で全社利用され、現在は22万を超えるページを有しているとのことです。更に、アトラシアン製品を拡張するアドオンを使って、TableauやInVisonなどの他社製品と連携し、アトラシアン製品をコアとして柔軟に最適な環境でコラボレーションしながら仕事を進めていると強調しました。

また、「プロジェクトマネジメントツールを好きになるなんてありえないと思っていた。でもConfluenceを本当に好きになった」「使いはじめてすぐに恋に落ちた」「最も技術と縁遠い人でもすぐに慣れることができ、今ではConfluenceのない環境が考えられない」など、現場のユーザーがいかにアトラシアン製品を気に入っているかについて、彼女に寄せられたコメントを紹介しました。ケリーは、小児癌で命を落とす子供の数をゼロにするために活動を続けていくために、アトラシアンが今後も必要不可欠なパートナーであるということを改めて強調します。

アトラシアンは、NPO向けに無償、またはお求めやすい価格で製品ライセンスを提供しておりますが、このNPOライセンスが人々の命を救うという大きなミッションに貢献しているということに非常に感銘を受けました。

開発チームとIT運用チーム

次のスピーカーは、開発チーム向け製品のマーケティングを担当するショーン・リーガン。まずはケリーに対する感謝の言葉から始まり、不確実性の高い今を奮闘する医療関係者に対する感謝とアトラシアンが彼らをサポートできることを誇りに思っているという意思を強く表明しました。

ショーンは更に、このイベントがデジタルな世界の変化を現す良い例であると話します、従来物理的なイベントの開催が難しくなった場合はキャンセルするよりなかったが、変化に適応し、前進し続けることができた。これこそがデジタル経済の基礎であり、競争優位性であり、アトラシアンがここにいる理由だとします。200近い国における16万社を超える企業がアトラシアン製品を活用し、AgileやDevOps、ITSMトランスフォーメションに取り組んでいると言います。アトラシアン製品の活用は関わるチームだけではなく、戦略を具体的な作業とつないで可視化することで、経営層の意思決定にも役立つとアピール。しかし、モダン開発やDevOps、またはITSMが必要とするすべてのツールやソリューションを提供する単一のベンダーは存在しないとして、様々なベンダーと連携をしながら最良のソリューションを提供するアトラシアンのオープンな姿勢に触れ、その上でアトラシアンが提供できる最大の価値はコラボレーションの促進であると説明しました。仕事に共通のプラットフォームを提供することで、他の誰よりも多くのチーム、ツール、データに加え、多様な仕事を統合できると言います。

しかし、この10年のDevOpsムーブメントと最近のITILのアップデートによって、ソフトウェアチームのアジリティとマインドセットを、IT運用チームの要件とマインドセットにうまく統合しようとする動きに成果がみられ、最新の調査では、99%の人がDevOpsがポジティブな影響を組織に与えたと考えているという結果が得られたとのこと。これは驚くべき結果で、ほぼ全てのチームが開発チームとIT運用チームの効果的な連携は必須だと考えている証拠ですが、まだ大きなギャップが残ると言います。例えば、メールやチャット、チケットの起票以外に開発と運用とビジネスチームが上手くコラポレーションする方法がないこと。そしてこれを実現するツールがJiraとAutomation for Jiraであると紹介し、ITチーム向け製品のマーケティング担当のアミタ・アブラハムと共に、製品のデモを見せながらお待ちかねの新機能の紹介をしていきます。

まず紹介したのが、Bitbucketの “Your Work Dashboard” と、Automation for Jiraの “Live Status”。Your Work Dashboardでは、最近作業したリポジトリ、プルリクエスト、アサインされているJira Softwareの課題など、開発者が必要な全ての情報がリアルタイムにダッシュボード上で整理されているため、メールの確認も不要です。またLive Status機能は、リポジトリやパイプラインにおける設定が変更されるたびに自動的にJiraの課題にも反映され、マニュアルでの更新作業をなくし正確性の向上と時間短縮を実現します。

ショーンは続けて、Bitbucket pipeline上で脆弱性を発見しアラートを上げて知らせてくれる “Code Insights” を紹介します。ビルドに脆弱性を検知するとパイプライン上で自動的にデプロイを停止。脆弱性の内容や、関連するコミット、Jiraの課題、マスターブランチ、レポートなどへのリンクをBitbucket 内で確認することができます。また、脆弱性をJiraの課題として登録することができ、いつ解決されるのかトラックできます。解決された際には自動的にパイプラインが動き出し、変更はステージングにまでプッシュされ、全てはグリーンになります。この機能は全てのBitbucket Cloudのユーザーに5月中に利用可能となるとのこと。

更に、BitbucketやJenkinsをはじめとするCI/CDツールから自動的にJira Service Deskへ変更リクエストを作成し、Automation for Jira による新しいリスク査定エンジンが、自動で承認・デプロイ可能な低リスクな変更リクエストか、またはさらなる承認確認が必要な高リスクな変更リクエストかを判定します。またデプロイされたすべての変更をJira Service Desk内の1箇所で確認することができるため、開発者に自由を与えながらも運用チームが完全な監査証跡を手にすることができ、開発と運用チームの真のパートナーシップを促進。さらに、Jira Service Deskの新しい変更管理ビューでは、高リスク変更に対して、CI/CDツールからの変更に関する情報、影響を受けるサービス、リスク査定エンジンが出したリスクスコア、変更承認者など、変更管理者に必要な情報すべてを確認することができます。開発者は、CI/CDツールから直接変更リクエストの進捗を確認でき、変更が承認されると、Jira Service Deskは自動的に変更を運用環境に適応します。

ここまで新機能や製品をリリースする際に役立つ機能が紹介されてきましたが、何か問題やシステム障害が起こった際に素早く解決する際の新機能もここで紹介されます。Jira Service Deskの “Incident Builk Linking” では、Jira Service Desk上でいくつかの関連するインシデントをまとめて主要なインシデントと紐づけたり、Jira Service Deskの操作画面からOpsgenie上に新しいインシデントを作成したりすることができるようになりました。またOpsgenieとBitbucketの連携により、システム障害解決のために必要な情報が整理された新しいダッシュボード “Incident Investigation Dashboard” をリリース。整理された情報を見ながら根本原因を究明し、該当のサービスをいち早く復旧させることができます。さらに、OpsgenieとBitbucketの連携により、特定のサービスに関係するデプロイメントの中から、サービスがダウンする直前に発生したデプロイメントを潜在的な原因として追加。その変更を加えた開発者を特定し、変更をロールバックして障害を解決、サービスを復旧させることが可能になりました。最後に、Opsgenieに記録された振り返りをワンクリックでConfluenceにエクスポートする機能の追加について紹介し、話をショーンに戻します。

そしてショーンは、現代の企業においては、開発や運用などの技術的なチームだけでなく人事やマーケティングなどを含めた全社で働き方の変革を進めていくことが求められるという点に触れ、オープンでアジャイルなコラボレーションを実現する方法を紹介しているアトラシアンのプレイブックの活用を勧めました。また、技術チームを全社に繋ぐ方法としてJira Softwareのロードマップを紹介。ロードマップを使用すれば、企業内の誰でも、特定のチームや製品、サービスの状況を把握することができます。昨年のSummitでリリースしてから好評を受け、様々な機能リクエストを頂いているとのことで更に投資をしてお客様の要望に応えたと言います。中でも「ロードマップはクラシックプロジェクトでは利用できない」という声が最も多かったため、クラシックプロジェクトでもロードマップ機能をリリースします。つまりCloud版のJira Softwareでは全てのプロジェクトを可視化し、ゴールに対する進捗を把握することができるようになります。

更に、複数のチームやプロジェクトの状況を1つのロードマップ上で可視化したいといった要望も多かったため、これを実現する “Advanced Roadmap” をJira Softtware Premiumの機能としてリリースします。Advanced Roadmapは、チームに信頼できる唯一の情報源を提供し、関係者が組織レベルで何が起こっているのかを把握しながら、必要に応じて詳細を確認するのに役立ちます。これはもともとサーバー版のPortfolio for Jira 3.0 の機能として提供していましたが、今回クラウドへこの機能を追加することになりました。

Jira Sofwareのプランニング機能を整理すると、合計3つのロードマップツールがあります。1つ目は無償ならびにスタンダードのJira Softwareに含まれるチームレベルの状態が把握可能なロードマップ、2つ目はプレミアムに含まれる複数チームの取り組みがマクロで確認できるAdvanced Roadmap、そして3つ目はエンタープライズ全体で大規模アジャイルを実践している組織のためのJira Align。組織の目的によって使い分けることで、最適な形での可視化、管理を行うことができると強調しました。

OPENな働き方であらゆるチームの成果を最大化

Keynoteの最後のスピーカーとして登場したのは、ConfluenceとTrelloのマーケティングを務めるラジ・サルカール。まずラジは、今の時代はチームの時代であり、複雑な課題を解決していくためにはチームが必要不可欠であると提言します。しかし、同時にチームワークは難しいと強調。異なる役割を持つ多くのチームが協力して1つの大きな問題に取り組むことは、言うまでもなく簡単なことでありません。しかもそれが現代はより難しくなっていると言います。なぜなら、毎日のように新しいツールが市場に登場し、そのナレッジをチーム全体で蓄積していく必要があったり、新しいテクノロジーもどんどん生まれ、今までの手法では通用しなくなってきたりもしています。加えて、新たな世代がチームにどんどん加わり、仕事に対する考え方も異なる世代同士が互いに協働することも必要不可欠。

そんな現代のチームが成功を収めていくためには、オープンに働くことでチームの生産性とアジリティを向上させ、イノベーションを促進させることが必須であると言います。そして、新しいツールを初めて利用する際の難しさについて触れ、それを解消し素早く生産性を高めるものとして各種アトラシアン製品に用意されているテンプレートを紹介。テンプレートを用いることで初めて利用する製品でもすぐに最適な形でプロジェクトを推進することが可能だと言います。

さらに、Jira Service Deskに新しく加わったビジネステンプレートを紹介します。人事や法務、総務チームなどに共通の一般的なタスクをテンプレートと用意し、ビジネスチームが各種プロセスを一元管理するツールとしてより利用しやすくなりました。Confluenceにも新たに75種類の新しいテンプレートが追加され、最新のテンプレートギャラリーがリリースされました。セールスフォースやIndeedなど様々なパートナー企業のテンプレート提供により、あらかじめ確立されたプラクティスで効率的に仕事を進めることが可能になります。

次に、テクノロジーの新トレンドへの適応について話を続けます。昨今のトレンドであるノーコード。これを利用した機能として、TrelloのButlerを紹介します。Butlerは、あらかじめルールを設定しておくことで作業の自動化を行える機能ですが、更にJiraやSlackと連携させて作業を自動化させることができるようになりました。Trelloから自動でJiraのチケットを作成したり、既に存在しているチケットにコメント追加を行うことができたり、Slackチャネルにメッセージを自動配信することも可能に。ツールを超えた作業を自動化でき、より生産性を高めることができます。

更に、Code Barrel社買収により、新しくJiraへ追加された機能 “Automation for Jira” についても紹介。繰り返し発生するタスクをノーコードで自動化し生産性高く作業をすすめることが可能になりました。自動化機能は、Confluence Cloud Premiumでも提供される予定です。また、JiraとConfluenceにて新たなナビゲーション画面がリリースされ、ナビゲーションバーがページ上部にていつでも確認できるようになり、製品の切替、スペースやページの確認、作成、検索も瞬時にできるようになりました。Confluenceのダッシュボードも刷新され、最近見たページや関連するフィードなどがすぐにわかるようになりました。困った時に立ち戻るホーム画面として役立つに違いありません。

そして最後に、新しい働き方をどうサポートするのか、組織内のイノベーションをアトラシアン製品がどう支援するのかについて話を進めます。エンタープライズのコンシューマライゼーションによって、ユーザーは使いやすくて信頼性が高く、使っていて楽しい製品を期待しています。そこでTrelloでは、いくつかの楽しい機能を追加しました。写真素材のUnsplashと提携することでより魅力的なボード作成を可能にした他、GIPHYと提携して楽しいスタンプを使えるようにしました。また、タスクの完了を祝う仕掛けも搭載しています。

そして、Confluenceでも同様に仕事をよりシンプルで楽しいものとすべく、Analtyticsの機能を充実させ、自分が作成したコンテンツの人気を可視化。今後チームのためのコンテンツを作成する際に活かせる貴重な情報となります。また、ページを読むために所要する時間をページトップに表示させることが可能になりました。そしてこのAnalyticsの機能は、当初Confluence Premiumのみの機能でしたが、Standardでも利用可能になります。

Confluenceのエディター機能にも新たな機能が追加されました。少し詳細すぎる情報はデフォルトではページ上から隠し、ページをよりシンプルにできるExpand機能や、ページに貼り付けたリンクのタイトルが自動で表示されるスマートリンク機能、マクロ検索ブラウザで表示されるマクロをより需要の高い順に整列したと発表。またインラインコメントにも “/” 入力から機能を選択できるようになりました。そして、たくさんのユーザーより希望のあった、編集モードでのインラインコメントの操作が可能になりました。これにより、ページ公開せずともインラインコメントでのコミュニケーションを継続することができるようなります。

終わりに、ラジはアトラシアン製品を開発チームやITチームだけでなく組織の中の全てのチームで活用し生産性を高め成果を最大化させようと訴え、Day.1のKeynoteを締めくくりました。

今年も様々な製品に関する情報が沢山提供されたDay.1のKeynote、残念ながら全ての新機能についてお伝えしきれていないため、ぜひ以下よりレコーディング版をご覧ください。

Day.1 Keynoteを視聴