Atlassian Summit 2016 DAY 1 基調講演レポート

こんにちは。今週は米国サンノゼから、Atlassian Summit 最新情報をお届けしている朝岡です。
さて、今週月曜日から各種トレーニングや、パートナー、お客様向けの特別セミナー等から始まった本年のAtlassian Summitですが、いよいよ本日、メインとなるカンファレンスが開幕しました。
初日の今日は、キーノートとブレイクアウトセッションが行われた他、展示エリアに多くのパートナーがブースを出展。各社の製品やソリューションをアピールしていました。夜には毎年恒例の参加者パーティー"Summit Bash"がありますが、まずは速報として基調講演の内容を紹介します。

感謝とチームの大切さ

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華々しく登場した共同創業者兼CEOのMike Cannon-Brookesによる感謝から始まります。
本年は3,200人、35か国以上からの参加者を迎え、7つのトラックにて75セッション以上を展開するエキサイティングなイベントを支えていただいているスポンサーの皆様をご紹介した後、2年前に二人がSalesforceと共に始めた、企業の株式、利益、製品、社員の時間の1%を社会貢献に捧げるPleadge 1%の取り組みへの賛同企業が、当初参加の11社から54社に増えた事に触れ、アトラシアンが大切にしている「Give Back(還元する)」という企業理念に賛同いただいている多くの皆様に感謝の意を伝えました。
続いて、昨年のサミットからの変更点を振り返り、最も大きな変更点として、二人とも3人目の子供が家族に加わった事、ミニバンを買った事を挙げ、会場の笑いを誘います。
ですが、当然他にあった大きな変更点としては、昨年IPOした事。アトラシアンにとっては2つの大きな意味があり、1つはアトラシアンの向かう方向性、14年間チームが成し遂げてきた事、そしてその間にお客様から大きな信頼とサポートを得た証であるという事、そして2つ目は私たちが日々欠かさず考えている「チーム」への感謝の印です。アトラシアンにとって最大のミッションは「全てのチームの可能性を解き放つ」事であると同時に、あらゆる場面でチームの事を必ず考えます。
そんなアトラシアンらしく、今年は創業者の2人からだけではなく、日々チームで働く多くのアトラシアンスタッフが入れ替わり立ち替り登場して、次の1時間に各製品の最新ニュースが紹介されました。

JIRA Software

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まずは、みんな大好き、アトラシアンのドイツ人レースドライバー(という冗談で)Jens Schumacherが登場し、プランニングとトラッキングに費やす時間が短ければ短いほど、将来のためにかける時間が増えるとして、生産性に大きく影響する3つの視点からJIRA Softwareの改善点を説明。

  • Boardで作業の整理とトラッキング
  • Portfolioで小規模から大規模なプロジェクトのプランニングを支援
  • モバイルでどこにいても必要な情報にアクセス

ボードに関連する改善点は2つ:カードのデザイン変更と、カンバンバックログの導入です。ボードでの作業はカードで行うため、時に膨大な量のカードが存在します。限られたスペースで適切な情報を表示をできるよう、同じ情報量をより省スペースで表示する変更がなされました。また、カンバンボードは比較的小規模なチームのトラッキングには効果を発揮しますが、問題点としてはToDoが増えすぎてしまい、プランニング用途には向かないという事です。そこで既にスクラム手法で定義されているバックログの概念を、カンバンバックログとして導入。ボードで作業する際、たくさんの課題があると自動的にプランニングに使用するカラムを検知し、サイドバーに新たに設けられたバックログセクションに格納します。バックログでは、プランニングに最適なまとまったリストビュー表示がされ、ボードと同様、課題の詳細表示も可能。さらに、課題のすべてのフィールドがバックログまたはボードのいずれでも変更可能になりました。この機能は、カンバン及びスクラムで同じく提供されます。

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複数のチームやプロジェクトのプランニングのために2年前に提供を開始したPortfolio for JIRA。セットアップの煩雑さや、プランと現実との同期が課題でした。Porfolio 2.0のLive Planでは、これまでの40ステップあったプランの設定手順を、5ステップに簡略化。開発チームがエピックに加えた変更もLive Planに同期されるため、プランと現実の同期がリアルタイムに行えるようになりました。さらに、Live Planにフィールドを追加。ラベル、コンポーネント、カスタムフィールドがLive Planで表示、編集可能になりました。
そしてモバイル。ボードの話が沢山出ましたが、JIRA Mobileでもボードの利用が可能になりました。また、Android用アプリもPlay Storeにて提供を開始しました。

Bitbucket

次に、Bitbucketで開発者の生産性を上げる方法について。今日、クラウドでBitbucketを利用している開発者は500万人。その開発者の生産性を上げることが2016のテーマの一つでした。幾つかこのカンファンレンスで語られる機能はあるものの、特にGit LFSのサポートについて、亀の3D画像を例にとりあげて解説されました。BitbucketのGit LFS実装は、大きなファイルを1つの塊としてアップロードする代わりに、ファイルを幾つかの小さな塊に分割し、それを並行してアップロードすることを可能にしています。それによって、アップロード速度が3倍早くなります。

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さらに、ファイルに変更が生じた場合、その差分だけを感知し、アップロード。速度は9倍早くなります。この機能は、Bitbucket Cloud特有の機能です。
その他、BitbucketのGit LFS 実装特有な機能として、Bitbucketから直接3Dファイルをプレビューできるだけでなく、Illustrator やPhotoshop、各種ビデオやオーディオ形式に対応しています。

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Confluence

続いて、Software開発チームだけでなく、あらゆるチームが様々な使い方をしているConfluenceについて、プロダクトマネージャーのWendell Keunemanが登場。 世界中の組織やチームがConfluenceで作ったページが1億ページを突破したことに触れ、NASAでは5000人を超えるエンジニアがソフトウェアプロジェクトで協業するためにConfluenceを使用し、TwitterのITチームは、彼らの運用する120のJIRA Service Deskからの問い合わせチケット削減のためにConfluenceをナレッジベースとして使用。500人のBMW財務チームはミーティングを減らすために、Spotifyは世界20のオフィス間でのコミュニケーションにConfluenceを使っている事が紹介されました。スペースの中でページを作成し、整理、スペース内で見つけやすくする事は、より素晴らしいものの構築に費やせる時間を増せるという事。そのための機能改善が幾つか説明されました。

まずはスペースから。年内にクラウド版Confluenceでのスペース体験が刷新され、プロジェクトに合わせて完全にカスタマイズ可能な概要ページが新たに導入されます。

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ページタブでは、スペースの構造やページ属性を一覧で確認する事が出来ます。ページの移動や整理はドラッグ&ドロップするだけ。プロジェクトの構造を決める時の時間を大幅に削減します。また、以前よりもページをリロードする必要性を削減したため、3倍近く早いナビゲーションが可能。
実施した調査によると、直近で表示していたページに戻るという需要が高かったため、作業をしていたページや最近表示したページ、後で見るをMy Workとしてまとめ、サイドバーにDiscover、My Work、My Spaceをグローバルメニューとする事で、Confluenceのどこからでも必要な情報にアクセスしやすくなります。

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さらに、Webとモバイルでの体験を統一。Webでの作業は自動的にモバイルにSyncされるため、表示、作成や編集していたページに出先からすぐアクセス可能に。Webと同じくiPhone アプリにもスペースブラウザを搭載。お気に入りのスペースやサイト全体から目的のページを探しやすくなります。モバイルにおけるConfluenceとJIRAの往来もシームレス。クラウド利用のユーザー向けには、Androidアプリの提供も開始します。
そして、ページの作成に欠かせないこととして、コラボレーティブエディティング(共同編集)機能をクラウド版で提供開始。サーバー版にもConfluence 6.0のリリースに搭載されていることが発表されました。

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JIRA Service Desk

次は、Service Desk チームからEdwin Wong。この2年のService Desk 進化の変遷を振り返ります。大きな事としてはITIL認定を受けた事。その他、カスタマー体験を良くするための新機能や改善が多くあった事に触れつつ、話はサービス提供側へ。実装済みの様々な自動化エンジンを拡張し、様々なタスクを自動化可能。プロビジョニング、デプロイメント、設定変更や、パスワードリセット、さらにはトリアージや担当者へのルーティングまで、特定の条件に応じて自動かすることができます。送信するemailやコメントに追加するメンション、外部サービスを使ったSMS送信なども可能です。
また、ワークフロー設定の中で、承認プロセスが簡単に組み込めるようにもなりました。

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他に、JIRA Service Deskの利用が拡大するにつれ、組織外のお客様へのサービスの提供に利用される例が増え、そのシナリオ固有の機能も追加するに至りました。社外のお客様からの問い合わせシナリオでは、多くの場合個々のカスタマーが、組織にグループ化されます。そこで、新たにCustomer Organizationという概念の導入です。

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どのユーザーがどの組織に属するのかを管理し、組織ごとに権限の設定ができるため、特定の組織にのみ、特定のサービスデスクポータルへのアクセスを提供するなどと言った事が可能になります。また、起票する際に、どの組織と共有またはプライベートにするかなども設定できます。組み込まれた通知添付レートを使えば、お客様へのコミュニケーション手法として典型的なemailを使って、カスタマイズ、ローカライズが可能なemail 通知を任意のタイミングで送信することが可能。
ナレッジベースとしてのConfluenceとの統合機能も強化され、JIRA Service Deskのコンテクストの中でナレッジが閲覧可能な他、パブリックにアクセス可能なConfluenceナレッジベースの場合、ワンクリックでお客様に共有することも可能です。
さらには、APIや拡張ポイントなどを使って、JIRA Service Deskを様々な外部ツールやサービスと接続する事ができます。すでに多くのエコシステムベンダーがアドオンを開発、提供しています。

StatusPage

サービスデスクでインシデントや障害と向き合う流れから、アトラシアン製品ファミリーに新しく加わったStatusPageの話へ。同製品チームのScott Kleinより、StatusPageがもたらす価値についての説明がありました。インシデントや障害に対処すべき時に、適切にその問題に対する情報が提供できていないと、既知の問題に関する問い合わせ対応ばかりに追われ、肝心の問題解決に時間がかけられない。そのような問題を解決するのがStatusPage。StatusPageは、インフラのすべてのステータスが確認できる1つの場所を提供します。これにより、また知られていない問題のみ報告が上がるようになり、顧客もサポートもハッピー、開発チームは問題解決により集中することができるようになります。

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初のアトラシアン製品との統合実装として、Service Desk内でStatuPageの情報が確認できるようになりました。また近い将来、インシデント管理やコミュニケーションへのさらなる強化を提供する事を約束し、バトンを次の話者に渡します。

HipChat

難局において重要なのはコミュニケーションとして、HipChatに話は移ります。はじめに、事例ビデオの紹介。非営利団体のためのクラウドファンディングであるGlobal Givingは、有事が起きた際、HipChatを使って状況の把握、支援の必要性などを議論し、後日ふり返りを行います。続いて、HipChatチームよりElena Gormanがステージ上へ登場し、HipChatを「知る」だけのツールから「アクション」を取るツールへと変化させる取り組みを紹介。

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HipChatとJIRA、Confluence、Bitbucket及びStatus Pageとの統合を再設計し、HipChatのルームにいながら、重要な事項を把握、そこからアクションを取りやすくしました。特定のJIRAプロジェクトと関連するアイテムがプロジェクトチーム用のルームにマッピングしやすくなり、議論する同じ場で、チケットの進捗を知ることができます。現在ベータとなっているConfluenceとの統合では、Confluenceスペースを、任意のHipChatルームにマッピング可能。高度なフィルタリング機能を備え、すぐに必要なページやコンテンツにアクセスできます。BItbucketとの統合は、プルリクエストの状況を確認し、レビューが止まっている人がいれば直接HipChatからPokeする事により、スケジュール通りにレビューを進めるなどが可能です。そして最後にStatusPage。インフラやサービスに影響を与えている重大な課題を知る事はとても大事ですが、StatusPageとの統合は、HipChatのルームに直接警告を流し、すぐに状況を把握し、アクションが取れるようになっています。
また、新たなコミュニケーション手段として、グループビデオと画面共有機能が紹介されました。

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エンタープライズ

アトラシアンが注力している事の一つとして、より大規模なお客様に対する支援や対応の改善があります。テクニカルアカウントマネージャーやプレミアサポートの提供など、プログラム的な展開の他に、大規模運用に対応するデータセンターエディションの提供を提供してきました。ここでエンタープライズチームのCameron Deatschより次世代のデータセンターについて幾つかの発表がありました。

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まずはAmazon Web Serviceのネイティブサポートです。Amazonと共同でクラウドフォーメーションテンプレートとクイックスタートガイドを作成。数分でサーバーノード、データベース、ロードバランサーを含むデータセンタークラスターをAWSに展開可能となります。また、これによって、AWSのauto-scalingやサーバーキャパシティの自動増減などのメリットを享受することができます。
JIRA Software Data Center及びBitbucket Data Center は対応済み、近々他のData Center製品も対応します。さらに、今年の12月31日までにAWS上でData Centerを評価すると、$1,200分のAWS使用が無料で可能です。そして、SAML2.0のサポート。すべてのData Center製品にシングルサインオンが可能になります。さらに、Bitbucket Data Center Testing ツールキットのリリース。アトラシアンが開発環境で使用している同じテストを使って、Bitbucketをエンドユーザーに解放する前にアプリケーションのパフォーマンスをテストすることができます。また、ミッションクリティカルなシステムのアップグレードは週末にやるしかない作業ですが、Data Centerでは、ダウンタイムゼロのアップグレードをサポートします。より頻繁にアップグレードが可能なため、バグフィックスやセキュリティパッチ、最新機能をユーザーに提供できる事を、「二度と週末に働かなくていい」と言います、と紹介している姿に会場の皆がニヤリと笑っていました。
そして多くの要望が上がっていたHipChat Data Centerの提供開始に向けたベータ版の展開が11月に始まる事をアナウンス。hipchat.com/datacenter にて事前受付を開始している事を伝え、次の登壇者へ。

エコシステム

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多くのお客様がアトラシアンのツールの良い点として捉えている事に、柔軟な拡張性があります。そしてアトラシアンには、そのプラットフォームの上でお使いいただけるソリューションを作る、素晴らしいエコシステムがあります。続いてエコシステムチームより、Max Manciniの登場。10000人以上のデベロッパーが2000以上のアドオンをマーケットプレイスに公開していることに触れ、このようなモメンタムを作るためにしている事の中から、毎年実施しているハッカソン、Codegeist(コードガイスト)を紹介。今夏は900人のデベロッパーが革新的でクールなアプリを作っていた中からいくつかのアドオンをピックアップ。
日々増え続けるアドオンの中から適切なものをより探し出しやすくするため、Market Placeにおける新たな検索とフィルタリング体験への取り組みをアナウンスした他、クラウドアドオンで、サーバー同様のAtlassian Verify制度の導入、新たなクラウドセキュリティプログラムの導入など、よりクラウドアドオンの利用を促進するプログラムを紹介しました。

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将来の体験:パーソナライズされたホーム画面

最後に、複数のアトラシアン製品間での作業体験をどのように向上するか、アトラシアンが今考えている方向性をプラットフォームチームのSherif Mansourから。まずはこれまで製品間連携を良くするだけでなく、これらツールの活用が進むよう、製品間で統一された体験を提供することにも力を注いできた事を説明。例えば、JIRAで何かをする場合の作業は、Confluenceでの作業と似た体験になるようにする、などといった具合だ。しかし、それ以上に、今やっている全ての仕事を一箇所でまとめて見る事ができるビューを提供したらどうだろうか?という事で、今取り組んでいる内容をチラ見せ。沢山のタブを開いて並行して様々なツールを使う状況を解決するために、パーソナライズされたホーム画面を提供します。各製品のヘッダーにあるホームアイコンをクリックする事により、パーソナルホームへ簡単にナビゲート。ホームには、あらゆるツールで作業する内容が全て一箇所にまとまっています。まずこのホーム画面は、アトラシアンの新しいビジュアルスタイルを採用しています。モダンな見た目にリフレッシュされたスタイルは、今年後半から順次他の製品にも適用されていく予定です。

home
もうブックマークやメールを未読にしたり、ブラウザを沢山開く必要はありません。ホームは、自動的にあなたのやっている作業をキャプチャします。JIRAの課題やConfluenceのページ、プルリクエストで作業するたび、ホームに表示され、いつでも作業を再開できます。また、特定のチケットやページで何度も作業を繰り返す時など、ツールの利用に応じてホームが学習して適応し、次に再開する作業を予測して表示します。特定のJIRAプロジェクトやConfluenceスペースに、または特定のアプリにアクセスすることも、全てホーム一箇所から可能です。
ナビゲーションだけでなく、JIRAやConfluenceにまたがる最近の作業を検索したり、同僚と迅速に繋がったり、ステータスを一目で確認することもできます。さらに、管理者にはプロジェクトやスペースの追加やユーザーの追加といった管理機能も提供するだけでなく、もちろん新規に何かを作り始めることも可能です。
ホームは、一所から、全ての製品におけるアクションを可能にします。さらに将来、アトラシアン以外の製品で作業する場合もホームに含めることを視野に入れて検討しています。
フィードバックやベータのご案内に興味がある方は、atlassian.com/home からご連絡ください。

最後は再びMikeが登場し、今回サミットに来れなかったメンバーも含めたアトラシアン全員のチームワークと、お客様への感謝の言葉を述べて、初日の基調講演を締めました。


今年は様々な製品に関する情報が沢山提供された初日の基調講演、ライブストリーミングを見逃した方は、ぜひ録画をご覧ください。

キーノート録画を視聴