アトラシアン、プロダクトチームに関する調査結果を発表

アトラシアンは、ウェイクフィールド・リサーチ社と共同で、米国・ドイツ・フランスの大手企業に勤務するプロダクトマネージャーおよびプロダクトチームのリーダー700名を対象に調査を実施しました。
調査対象は、従業員数500名以上の企業に所属し、マネージャー以上の役職に就いている方々です。
本調査は、グローバルなプロダクト開発の最新動向や課題を知る上で、日本企業の皆さまにも多くの示唆を与える内容となっています。

ここでいう「プロダクトチーム」とは、単なるソフトウェア開発部門ではありません。ユーザーに価値を届ける製品やサービスを継続的に生み出すことを目的とし、エンジニア、デザイナー、マーケターなど多様な専門性を持つメンバーが自律的に協働するチームを指します。デジタル変革が進む現在、こうしたチームの役割はますます重要になっています。

プロダクトチームが置かれている状況 – 変化する環境下での役割と影響力の模索

調査対象の3カ国においてプロダクトチームは、約半数が戦略やイノベーションを主導する権限を持っていることが分かりました。他チームとの協業においても、プロダクトチームは主導的な役割を果たしているケースが多く見受けられます。

また、「エンジニア機能が設計やプロダクトのロードマップ策定にいつ関与するか」という問いに対しては、52%が「アイデア創出の初期段階から」または「初期のコンセプト検証期間中から」と回答。

エンジニアが初期段階から参加することで、アイデアやコンセプトの段階から技術的な実現可能性や制約、リスクを議論することが可能になり、実装の難易度や必要なリソース、既存システムとの整合性などを早い段階で把握できるため、後戻りや手戻りが減るという効果があります。さらに、エンジニアが初期から関与することで、エンジニア自身がプロダクトのビジョンや目的を深く理解し、主体的に開発に取り組む姿勢が強まりるというメリットを享受することができます。

一方で、プロダクトチームの84%が「自社プロダクトの市場での成功」に不安を感じていることも判明。変化の激しい環境下で、どのように成功を収めるべきか悩むチームが多い現状です。

また、自身の業務がビジネス目標とどのように結びついているかを明確に理解できていないチームも少なくありません。この背景には、次のような課題があることがわかりました。

  • 約半数のチームが「戦略立案に十分な時間を割けていない」
  • 40%が「実験をほとんど、または全く行わず、経営陣の意向に基づいてロードマップを策定している

さらに、過去3年間でプロダクト開発の現場では、以下のような変化が起きており、(ソフトウェア)プロダクトの重要性が企業競争力の源泉となっていることがうかがえます。

  • 収益性指標への重点強化(45%)
  • 迅速なデリバリーへのプレッシャー増大(37%)
  • 競争環境の激化(32%)

プロダクトマネージャの役割と課題 – 多様な期待と現実のギャップに挑むリーダー像

プロダクトマネージャの90%が、「自分の仕事がこの分野に惹かれた原点に合致している」と回答しています。彼らは、部門横断チームとの連携や、創造的な問題解決、ユーザーインサイトの獲得、イノベーション推進、戦略・ビジョンの策定などにやりがいを感じています。リーダーシップ層がすべきことは、プロダクトマネージャが情熱を燃やす協働的な問題解決の仕事を成功に導ける環境を整えることだと言えるでしょう。


一方で、複数プロジェクトや競合する優先事項、チームのキャパシティのバランス調整、どの機能や施策に注力すべきかの優先順位付けなど、日々多くの課題に直面しています。
最も重要と認識している「戦略策定」「ロードマップ構築」「データ分析・メトリクス追跡」などに十分な時間を割けていないと感じているプロダクトマネージャーが約半数にのぼりました。

残念ながら、プロダクトチームは現状維持に追われているようです。これは彼らが望む戦略的思考を妨げる障壁の一つと言えるでしょう。

 

プロダクトチームにおけるAIの活用状況と課題 – 生産性向上と新たな壁

AIは、ドキュメント作成などのルーチンワークや、市場・競合調査、データ分析、顧客フィードバック分析、進捗報告といった分野で積極的に活用されています。
AIの導入により、「1日あたり2時間以上の業務時間削減」など、生産性向上の効果を実感しているチームも多く見られました。

AIによって生産性が高まった仕事としては、

  • ルーチンワークの時間削減 (77%)
  • 重要度の高いタスクの実行の加速 (52%)

一方で、プロダクト開発における「優先順位付け」や「スケジュール調整」など、重要な意思決定は依然として人間が担うべき領域であるという認識が強いことも分かりました。

また、AIツールの複雑さや使い方の難しさ、効果的なプロンプト作成方法が分からない、トレーニングや知識の不足、ツールへのアクセス制限、AI出力の信頼性への不安、ワークフローへの統合性不足など、多くの課題も存在しています。

まとめ

本調査から、プロダクトチームは戦略やイノベーションを主導する重要な役割を担っている一方で、以下のような現状と課題が浮き彫りになりました。

  • 戦略立案やデータ分析など本質的な業務に十分な時間を割けていない
  • 自身の業務とビジネス目標との結びつきを明確に理解できていない
  • AI活用による生産性向上の一方で、意思決定や優先順位付けは人間が担うべき領域である

経営層やリーダーの皆さまには、現場の声を積極的に取り入れ、プロダクトチームが戦略的思考や創造的な活動に集中できる環境づくりを進めていただくことが求められます。
また、エンジニアがアイデア創出やコンセプト検証の初期段階から関与することで、技術的な実現可能性やリスクを早期に把握し、手戻りを減らすことができます。
AIはルーチンワークやデータ分析などで大きな効果を発揮しますが、最終的な意思決定や戦略策定は人間の役割であることを再認識する必要があります。

日本企業においても、プロダクトチームの力を最大限に引き出し、変化の時代をリードするための組織づくり・環境整備が今後ますます重要になるでしょう。