Rovo 活用の次の一歩:組織全体に AI をなじませ、仕事の進め方をアップグレードする

すでに Rovo をオンにし、Confluence や Jira で「ちょっと試してみた」段階の組織は多いと思います。
しかし、

  • 一部のメンバーしか使っていない
  • うまく使える人と、そうでない人の差が大きい
  • 「便利そうだが、日常業務にどう組み込めばいいかわからない」

といった声もよく聞かれます。

この記事では、Atlassian Community の学習パス
Get the most out of Rovo(英語)」

「すでに Rovo を使い始めた組織が、どう AI 活用の幅と深さを広げていけるか」

という視点で整理します。
アプリを入れた直後の「お試し」フェーズから、チームの日常に溶け込ませていくためのステップとしてお読みください。


  1. Rovo を「AI アシスタント」から「組織の知恵を引き出すハブ」へ

学習パスの冒頭レッスン What is Rovo(英語) では、Rovo を単なるチャットボットではなく、

  • Atlassian 製品(Jira, Confluence など)
  • 接続されたサードパーティ製品(Google Drive, SharePoint, Figma, Loom など)

にまたがって情報を検索・要約し、アクションにつなげるAI プラットフォームとして位置づけています。
Rovo の中核は、Atlassian の統合データレイヤーである Teamwork Graph です。人・チーム・プロジェクト・課題・ドキュメントなどのつながりを理解し、「いまの自分の仕事」に関係する情報を優先的に探し出してくれます。

ここで押さえておきたいポイントは 2 つです。

  1. Rovo は「社外の何でも答えるチャット AI」ではなく、「自社のナレッジと仕事」に特化した AI であること
  2. 権限モデルを継承しているため、「見えてはいけない情報」はそもそも回答に使われないこと

つまり、「検索窓が AI 化した Atlassian 全社イントラ」のようなものとして捉えるとイメージしやすくなります。


  1. まずは「見つける」から:Rovo Search で社内ナレッジの迷子をなくす

2-1. 1 つの検索窓から、ツールをまたいで探す

Find information across your organization with Rovo Search (英語)のレッスンでは、Rovo Search を使って次のようなものを横断的に探せることが紹介されています。

  • Jira の課題、エピック、ボード
  • Confluence のページやブログ
  • Google Drive / SharePoint のファイル
  • Figma のデザインや Loom の動画
  • チームメンバーやチーム情報 など

従来であれば、

  • Jira でチケットを探す
  • Confluence で設計書を探す
  • Google Drive でスプレッドシートを探す

とツールごとに検索し直していたものが、1 回の検索で「仕事の全体像」をたどれるようになります。

たとえば、

「Project Blueberry の直近の進捗と、関係しているチームメンバーは?」

と自然文で検索すると、関連チケット・ページ・担当者情報が Rovo Search の結果に並び、場合によっては上部にナレッジカードとして要約が表示されます。

2-2. 質問をそのまま投げる:ナレッジカードと定義

Learn from Rovo definitions and knowledge cards(英語) では、Rovo が提供する 2 種類の「コンテキストヘルプ」が解説されています。

  • Definitions(定義カード)
    ハイライトした用語や略語を、その場で簡潔に解説するカードです。
    例)「H2 FY25」「Project Apple」「PPQ」など、社内固有の略語やプロジェクト名
  • Knowledge cards(ナレッジカード)
    検索結果の上部に表示される、人物・チーム・プロジェクトなどの要約カードです。

新しく組織に参加したメンバーが、ドキュメントや Jira の説明文に出てくる用語をいちいち聞き回らなくても、その場で意味を確認し、必要に応じて定義を編集・追加できるのが大きな価値です。

Definitions は誰でも編集でき、適切なスペース単位・サイト単位で表示範囲を制御できます。
「うちのチームならこの略語はこういう意味」といったナレッジを、会話ではなくプロダクトに埋め込んでいくイメージです。


  1. 「聞いて、考えてもらう」:Rovo Chat を日常業務の相棒に

3-1. Chat でできることの基本

Chat with Rovo to get answers quickly(英語) のレッスンでは、Rovo Chat の基本的な使い方が整理されています。

Rovo Chat は、次のような用途に向いています。

  • 情報を見つける:
    「この Confluence ページの要点を教えて」「このチケット群からリスクの高いものをピックアップして」
  • コンテンツを生成する:
    ユーザーストーリー、会議メモのサマリー、告知文、顧客返信文案など
  • 既存コンテンツをレビューする:
    「この説明をもう少し平易に」「社外向けのトーンに書き直して」など

プロンプトには、以下のような情報を組み合わせると効果的です。

  • タスク:何をしてほしいか(例:要約、改善、翻訳、ドラフト作成)
  • コンテキスト:誰向けか、どんな状況か
  • 参照:Confluence ページや Jira 課題、外部ドキュメントの Smart Link
  • トーン・形式:箇条書き / メール文 / 手順書 / テンプレート など

Chat の履歴は 30 日間保存され、後から検索・再利用が可能です。
一度うまくいったプロンプトや回答は、そのまま「チームとしての型」として使い回すことができます。

3-2. プロンプトを「設計する」:TCREI フレームワーク

Best practices for writing AI prompts(英語) では、良いプロンプトの構造として TCREI フレームワークが紹介されています。

  • T – Task: 何をしてほしいか
  • C – Context: 背景や前提条件
  • R – References: 参照すべき資料やリンク
  • E – Evaluate: 出力を評価する(正確さ・抜け漏れ・トーンなど)
  • I – Iterate: 追加プロンプトで改善を繰り返す

特に組織で Rovo を広げる際には、「良いプロンプトの具体例」をチーム内で共有することが大きな差になります。

例)

「この Jira エピックとリンクされた Confluence 2 ページをもとに、営業チーム向けの 1 ページ説明資料のドラフトを日本語で作って。トーンは社外向け、非技術者でも理解できるように。」

といった形で、対象読者・出力フォーマット・言語まで含めて書くと、実務でそのまま使えるレベルのアウトプットに近づきます。


  1. 「書く負担」を減らす:Rovo でコンテンツを生成・改善・要約する

4-1. 白紙から書かない:Generate new content using Rovo

Generate new content using Rovo(英語) のレッスンでは、Rovo を使った「書き始めのハードル下げ」について詳しく紹介されています。

Rovo は、次のようなシーンで力を発揮します。

  • Jira でのユーザーストーリー・受け入れ条件・コメントのドラフト
  • Jira Service Management での顧客返信やナレッジベース記事のたたき台
  • Confluence でのブログ、レポート、プランニング文書の初稿
  • 会議メモや要件定義からのアクションアイテム抽出
  • エピック記述からの子課題の自動分解(ワークブレイクダウン)

ポイントは、「完成版を AI に丸投げする」のではなく、「最初の 60〜70% を一気に書いてもらう」 という発想です。
人間は、それをレビュー・修正・追記する役割に集中できます。

具体例として挙げられているのは:

  • Confluence で顧客アンケートの設問案を 10 個生成してもらい、担当者が用途に合わせて手直しする
  • Jira のエピック説明から、Rovo に子課題候補を出してもらい、チームで取捨選択する
  • Jira Service Management のチケットから、トラブルシューティング手順や FAQ 記事のドラフトを作る

こうした「ゼロから 1」を Rovo に任せることで、チーム全体のアウトプット量とスピードを底上げできます。

4-2. 既存の文章を整える:Enhance your content using Rovo

Enhance your content using Rovo(英語) では、既存コンテンツの編集支援機能にフォーカスしています。

  • トーンの変更(より丁寧に・カジュアルに・フォーマルに)
  • 文法・スペルチェック
  • 言語の変換(例:英語の仕様書ドラフトを日本語の要約に)
  • 情報の整理・構造化(特に Jira の「Improve description」機能)

Jira の説明欄に長文が貼られていると、重要な前提や要件を読み飛ばしがちです。
Rovo の Improve description 機能を使うと、

  • 見出しや箇条書きに分解する
  • 前提・要件・受け入れ条件・リスクなどを整理する

といった読みやすい構造に再編成してくれます。

結果として、

  • メンバー間で要件の理解が揃いやすくなる
  • チーム外のステークホルダーにも内容を共有しやすくなる
  • 類似チケットを検索・比較しやすくなる

といったメリットが生まれます。


  1. 「読む時間」を減らす:Summarize で要点だけを素早くつかむ

Summarize content using Rovo(英語) のレッスン(ページ本文は短いですが)は、Rovo による要約機能を中心に扱っています。Rovo は次のような要約に対応します。

  • Confluence ページ全体の要約
  • ページの更新差分のみの要約(「今回どこが変わったか」)
  • コメントスレッドの要点抽出(Confluence / Jira)
  • Smart Link で埋め込まれた外部コンテンツの要約

レビューする資料が増えれば増えるほど、「全部を細かく読む」ことは現実的ではなくなります。
Rovo の要約を使えば、

  • まず要約で全体像をつかみ、必要な箇所だけ原文に戻る
  • 上長・他チーム向けに、短い「報告用サマリー」をすぐ作る

といった読み方に切り替えることができます。


  1. 「人の手では面倒」なタスクを任せる:Rovo Agents の活用

6-1. 既存 Agent を探し、チームの「お気に入り」を育てる

Work with Rovo Agents(英語) のレッスンでは、Rovo Agents を次の 3 つの使い方で紹介しています。

  • Chat から使う:Ask Rovo 画面で Agent を選び、会話しながらタスクを進める
  • エディタから使う:Confluence / Jira の編集画面で /rovo から Agent を呼び出す
  • 自動化から使う:Jira Automation などから Agent を呼び出し、定型処理を自動化する

まずは「既に用意されている Agent」を探し、チームでよく使うものにスターを付けておくのがおすすめです。

例)

  • ナレッジベース記事の下書きを作る Agent
  • 事故報告書やポストモーテムのテンプレートに沿って文章を整理する Agent
  • UX 調査メモからインサイトとアクションアイテムを抽出する Agent

「この Agent を使えばこの仕事が早く終わる」という成功体験を共有し、リンクをコピーしてチームの Slack / Confluence に貼るだけでも、利用が一気に広がります。

6-2. 独自の業務に合わせてカスタム Agent をつくる

Create custom Rovo Agents(英語)では、ノーコードで自社専用の Agent を作成する手順が紹介されています。

狙いどころは、

  • 手順がほぼ決まっているが、毎回ドキュメントを書くのが大変な業務
  • 「詳しい人に聞かないと分からない」が、すでにドキュメントは存在している領域
  • 複数の資料を毎回読み直している繰り返し作業

といったところです。

たとえば:

  • 「自社のセキュリティポリシーに沿った SaaS 導入可否チェック Agent」
  • 「自社のブランドガイドラインに沿ったプレスリリース文面レビュー Agent」
  • 「インシデント対応手順書を参照しながら、JSM チケットと Slack 通知をまとめて生成する Agent」

など、組織専用の "ミニ専門家" を増やしていく感覚で設計していくと、Rovo を単なるツールではなく、「業務そのものを組み込んだプラットフォーム」として活用できるようになります。


  1. Jira での検索と AI 活用のベストプラクティス

最後に、Best practices for using Rovo in Atlassian apps(英語) のレッスンでは、主に Jira で Rovo を使う際の注意点とコツがまとめられています。

7-1. 「AI は既存データ以上には賢くならない」

まず前提として強調されているのが、Rovo は「存在しないもの」は見つけられないということです。
権限がない情報や、そもそも Jira / Confluence / ナレッジベースに書かれていないことについては、AI も答えられません。

したがって、

  • Jira の課題情報を最新に保つ
  • Confluence のナレッジベース記事を定期的に更新する
  • 不要なチケットや古いページはアーカイブ・削除する

といった情報のメンテナンスが、結果的に Rovo の精度を上げる「AI 時代のガバナンス」になります。

7-2. Jira 検索で Rovo を最大限活かす

Jira 内で Rovo を使う時のポイントとして、次のようなベストプラクティスが紹介されています。

  • 具体的な条件を含める
    例)「Mitch Davis に割り当てられている Platform development スペースの未完了チケット」
  • 現実的には JQL に変換できるような問い合わせにする
    (優先度・担当者・ステータス・ラベルなど、JQL フィールドに対応する情報を盛り込む)
  • 必要に応じてフィルター・ソートを使う
    Rovo 検索後に、Assignee・Status・Label などで手動フィルタリングすると、目的の課題に早くたどり着けます。

また、Jira Service Management でナレッジベース用記事を作るときには、

  • テキスト中心で、表ではなく段落で構造化
  • 画像に依存しすぎない(AI は画像の中身を読まない)
  • 定期的な内容見直しを前提にする

といった点も挙げられています。


  1. 組織で Rovo 活用を広げるためのステップ

ここまで紹介してきた各レッスンを、「組織の導入ステップ」として並べ直すと、次のようなロードマップになります。

  1. 認識をそろえる:Rovo は「社内ナレッジに強い AI プラットフォーム」だと共有する
  2. 検索と定義から始める:Rovo Search と Definitions を、新メンバーのオンボーディングに組み込む
  3. Chat を「聞き役」として定着させる:日々の調べ物や要約を Rovo Chat から始める習慣をつくる
  4. 書く業務の 60〜70% を Rovo に任せる:コンテンツ生成・編集・要約をワークフローに組み込む
  5. 繰り返しタスクを Agent に切り出す:既存 Rovo Agents を見つけ、足りないところはカスタム Agent で補う
  6. プロンプトとデータ品質のベストプラクティスを共有し、「組織としての AI リテラシー」を上げる

  1. おわりに:小さな「AI 付き仕事の型」を増やしていく

Rovo の導入で大事なのは、「全社一気に AI 変革」ではなく、「小さな成功パターン」を積み上げることです。

  1. まずは 1 つのチーム・1 つのユースケースで、Rovo によって明らかに楽になった仕事をつくる
  2. そのときに使ったプロンプト・Agent・ナレッジの構造をテンプレート化する
  3. テンプレートを他チームに展開しながら、フィードバックをもとに改良していく

このサイクルを繰り返すことで、
「Rovo を使う」ことが特別な作業ではなく、「仕事の進め方そのもの」として組織に根付きます。

Rovo は単なる AI チャットではなく、
「あなたの組織の知識・プロセス・人のつながり」を土台に動く AI プラットフォームです。
この学習パス「Get the most out of Rovo(英語)」

アプリを入れただけの状態から、「組織の学びと仕事を加速する基盤」として Rovo を育てていけるはずです。