みなさん、こんにちは。
今回はACE Tokyo Training #01として開催されたトレーニングセミナーの内容をレポートします。
今回のテーマは、AtlassianのAI機能群の中でも注目度の高いRovoです。セッションでは、Rovoの基本的な使い分けから、JiraやConfluenceに備わるAutomation機能とRovoを組み合わせた実践的な活用方法まで、具体的なデモを交えながら紹介されました。
ACE Tokyoの通常イベントは事例共有や交流が中心ですが、今回はトレーニング形式で実施され、より実務に近い観点からRovo活用を深掘りする内容となりました。ランチタイム開催にもかかわらず多くの参加者が集まり、Rovoへの関心の高さがうかがえる会となりました。
今回のインストラクターを務めたのは、Atlassian Championとしてコンテンツの発信に携わる小西さんです。Rovo ChatやAgent、JiraやConfluenceに備わるAutomation機能を実際の業務で試してきた経験をもとに、機能の違いだけでなく、どの場面でどのように使い分けると効果的なのかを解説しました。
本セッションでは、Rovo Search・Rovo Chat・Agentという3つの機能の整理に加え、AIに任せるべき範囲と、人が責任を持って判断すべき範囲をどう切り分けるかが一貫したテーマとして語られていました。
Rovoは「3つの機能」をどう使い分けるのか
セッション前半では、まずRovoの全体像が整理されました。Rovoには大きく分けて、横断検索を担うRovo Search、対話形式で情報整理や相談ができるRovo Chat、そして特定の役割やスキルを持たせて動かすAgentがあります。
今回のセッションで特に焦点が当てられたのは、ChatとAgentの使い分けです。チャット画面から使う場合は、ユーザーがその場で質問しながら探索的に情報へ近づいていく使い方に向いています。一方で、Confluence編集中のインライン利用は文章作成や編集支援に強く、Jira上でのAgent活用は単発の小さなタスクを任せるのに適しています。さらに、JiraやConfluenceに備わるAutomation機能と組み合わせると、定期実行や条件分岐を含む業務フローの中にAIを組み込めるようになります。
チャットは柔軟ですがルーティン処理には向きません。逆に、JiraやConfluenceのAutomation機能は定型処理に強い一方で、チャット時に使えるスキルがそのまま使えるわけではなく、役割を絞った設計が重要になります。Rovoを導入するかどうかではなく、どの場面で、どの呼び出し方を選ぶかが活用の質を左右する、というメッセージが伝わる導入でした。
Automation機能とRovoを組み合わせた週次レポート生成
前半のハイライトとなったのが、Jiraのチケット更新情報をもとに週次レポートを自動生成するデモです。シナリオとして示されたのは、社内の大規模刷新プロジェクトを想定した環境で、毎週金曜日の夕方に、その週に更新されたJiraチケットを集計し、要約付きのConfluenceページを自動生成するというものです。
まずJiraやConfluenceのAutomation機能側で、実行日から対象週を計算し、JQLによるルックアップで該当チケットを取得します。次に、その一覧をAIに丸投げするのではなく、サマリーやステータス、更新日といった必要情報を整形した上で、Agentに渡す構造をつくります。Agentには、例えば「渡されたチケット一覧だけを使って、一週間分の活動サマリーを作成してください。渡されたデータ以外は参照せず、存在しない作業を補わないでください」といった指示を与えます。Agent側はこのように役割を「渡されたデータだけを使って週次サマリーを作成する」ことに限定し、ナレッジ参照や外部検索、追加スキルはあえて使わないシンプルな構成にしていました。
Automation機能の処理の中でRovoを使うときは、AIに検索させるよりも、必要なデータは先にルール側で集めておき、AIには整形と要約に集中させた方が安定しやすいという設計思想です。デモでは一度「直近1週間」という自然言語の表現が原因で、AIが日付範囲を推測してしまい、想定とは異なる期間でレポートを出力する場面も紹介されました。これに対して、対象期間を変数として明示的に渡し、プロンプトにも「対象期間は、渡された開始日から終了日までをそのまま使用し、独自に計算・推測しないでください」と記載することで挙動を修正していました。AIに任せる処理を具体化し、判断してよい範囲をプロンプトで明確にすることが、安定した出力につながります。
AIに自由に考えさせるほど便利になるとは限らない。むしろ、判断させる範囲を狭め、データに基づいて処理させる方が、業務フローの中では安定しやすい。
生成AIを業務に組み込む際には、JiraやConfluenceのAutomation機能が得意な決定論的処理と、AIが得意な要約・整形・言語化を分離することが重要です。その上で両者をつなぐことで、現実的で保守しやすい仕組みになります。
Automation機能からRovoを利用する際の注意点
セッションでは、JiraやConfluenceのAutomation機能からRovo Agentを使う際の注意点も率直に共有されました。特に重要なのが、Automation機能経由で呼び出したAgentではスキル利用が制限され、基本的にはテキスト生成中心の動きになることです。チャットでできる操作系の振る舞いを、そのままAutomation機能の処理に持ち込めるわけではありません。
もう一つ大きなポイントが権限の扱いです。Automation機能経由でAgentが動作する場合、接続ユーザーの権限で情報にアクセスしてしまう可能性がある点が紹介されました。ルールを起動した本人ではなく、接続設定を行ったユーザーの権限で検索や参照が行われることで、意図しない情報露出につながる懸念があります。機密性の高い情報を扱う場合には、設計段階で十分な注意が必要です。
Automation機能とRovoの組み合わせは強力ですが、権限モデルと参照範囲の設計は要確認です。特に機密データや組織横断の情報を扱う場合は、「誰の権限で動くのか」を先に整理しておくことが重要です。
また、データ取得、整形、プロンプト生成を一つにまとめるのではなく、変数ごとに分けて構造化することで、理解しやすさやデバッグのしやすさが高まります。「渡したデータが悪いのか」「解釈がずれたのか」を切り分けられる設計が重要だという話は、とても実践的でした。
JiraとConfluenceを使ったコンテンツ制作フロー
後半では、Rovoを使ったコンテンツ制作のデモが紹介されました。記事アイデアをJiraチケットとして登録し、専用AgentにConfluenceページのドラフト作成を任せます。Agentには、例えば「このテーマについて、記事のテーマ、想定読者、ゴールを整理し、リサーチレポート、論点、構成案、ドラフト、必要なビジュアルの項目を含むページ案を作成してください」と依頼します。Agentはこの指示とチケットに記載された情報をもとに、記事制作の土台となるページ案を生成します。
その後、別のAgentに「このテーマとターゲット、ゴールをもとに、競合記事や関連情報を調査する方針を整理してください。調査すべき論点と、確認したい情報を具体化してください」と依頼し、競合記事の観点や掘り下げるべき論点を整理します。さらにConfluenceの編集画面からチャットを起動し、調査方針に沿ってリサーチを実施します。デモでは、編集対象の「リサーチレポート」欄を指定した上で、「以下の調査方針で調査を実施し、結果をこの欄に追記してください」と依頼し、結果をページに反映させる流れも紹介されました。
ここで強調されていたのは、AIに調べさせて終わりではなく、人がその内容に意味づけを行う必要があるという点です。調査結果をそのまま文章化しただけでは、誰の視点で、何を伝えたいのかが曖昧になりやすい。構成案やドラフトの節目ごとに人がレビューし、意見・主張・解釈を差し込んでいくことが重要です。
AIは量とスピードに優れ、構造化や情報整理を支援してくれますが、「その内容が本当に適切か」「読み手にとって価値があるか」を判断するのは人です。外部または組織内に向けて発信されるコンテンツであればなおさら、その最終判断は人が担うべきだという整理は、納得感のあるものでした。
Rovo活用の本質は「役割分担」にある
セッション全体を通して印象的だったのは、Rovoを単なる時短ツールとして捉えるのではなく、人とAIの役割分担をどう設計するかという視点で語られていたことです。
Rovoは、情報を集め、整理し、構造化し、たたき台を作るのが得意です。一方で人は、その結果に対して目的との整合性を確認し、違和感を捉え、責任あるアウトプットへ仕上げていく役割を担います。「違和感は経験から生まれる」というまとめも印象的でした。違和感に気づき、なぜそう感じるのかを言語化してAIに返すことで、反復的な改善が可能になります。
Rovo活用の鍵は、「全部任せること」ではなく、「何を任せ、何を人が確認するか」を明確にすることです。量とスピードはAI、意図と責任は人。この分担が、実務で使える形に落とし込む上での土台になります。
おわりに
今回のACE Tokyo Training #01は、Rovoの新機能紹介にとどまらず、AIを実際の業務フローにどう組み込み、どうコントロールするかまで踏み込んだ内容でした。Automation機能と組み合わせた週次レポート生成や、Jira・Confluenceをまたいだコンテンツ制作フローは、日々の業務に応用できるヒントが多く含まれていました。
Rovoの進化は速く、仕様や使い方も継続的に変化しています。その中で今回のセッションが示していたのは、機能を追うこと以上に、AIに任せる範囲と人が判断する範囲を設計することの重要性です。Rovoをうまく使いこなすためには、プロンプトの工夫だけでなく、情報構造、権限、レビューの置き方まで含めた全体設計が欠かせません。
今後もACE Tokyoでは、こうした実践知を持ち寄りながら、Atlassian製品とAIのよりよい使い方を探っていく場が広がっていきそうです。
ACE Tokyoではこのようにさまざまなテーマで情報の共有や議論を行っています。一人で悩むよりACE Tokyoでみんなと相談すれば、皆さんのナレッジを活用してより良い解決策を見つけることができます。
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