みなさん、こんにちは。アトラシアンでコミュニティマーケティングを担当している新村です。今回は2月18日にオンラインで開催された第77回 ACE Tokyo Onlineの様子をレポートしたいと思います。ACE Tokyoはアトラシアンの公式コミュニティで、アトラシアンに関心を持つ皆様の交流の場として多くの参加者にお集まりいただいています。東京を中心に活動していますが、今後はこう言ったオンラインでのイベントも増やしていきたいと思っています。
今回はKINTOテクノロジーズの野村さんをお迎えして「AIを"あなたのチームメンバー"にする〜Jira/Confluenceに溜めた業務情報でAIと文脈を共有」 というテーマでの事例セッションでした。JiraやConfluenceに蓄積されたチケット、ドキュメント、判断の経緯といった業務情報を、どのようにAIへコンテキストとして渡しているのかの事例を紹介いただきました。
久しぶりのオンラインイベント

ACE Tokyoでは久しぶりのオンラインでの開催となった今回のイベントです。今回は新しいツールを使用してのイベントということもあり、冒頭から色々と試しながらのコミュニティイベントらしい立ち上がりとなりました。
そんななかでACE Tokyoのコミュニティの紹介と次回のACE Tokyoのイベントの案内が行われました。オンラインでの開催では、時間や場所といった制約を受けづらく、より多くおの方に参加いただけるので、これからも継続的に開催していきたいとのことです。
AIを"あなたのチームメンバー"にする〜Jira/Confluenceに溜めた業務情報でAIと文脈を共有

続いてKINTOテクノロジーズの野村さんより、人とAIが協働していくための取り組みについて紹介いただきいました。下記にセッション内容の要約を掲載します。
人とAIエージェントはどう協働するのか
――KINTOテクノロジーズが描く「AI時代の自働化」とAI活用の実践
生成AIが広く普及し、「AIエージェント」という言葉を耳にする機会も増えてきました。
しかし、実際に日々の業務の中でAIエージェントとどのように協働していけばよいのか、まだ手探りの組織も多いのではないでしょうか。
KINTOテクノロジーズ株式会社のコーポレートIT部門 AIファーストグループでは、RovoやConfluence、Jiraなどのツールを組み合わせて、人とAIエージェントが同じナレッジベースの上で協働する仕組みづくりを進めています。
本記事では、同グループで生成AIエンジニアを務める野村さんのセッション内容をもとに、人とAIエージェントの協働の考え方と、具体的なユースケースをご紹介します。
AIファーストグループのミッション
私が所属するAIファーストグループは、社内のAI活用を横断的に推進するチームです。主な活動は次の3つです。
- 教育・研修:現場メンバーに向けたAI活用のトレーニング
- ユースケース開発:業務の中でAIを活かせるシナリオの発掘と実装
- 技術検証:新しいモデルやツールの検証・評価
現場からのアイデアをもとにユースケースを検討し、PoCを通じて実現可能性を見極めたうえで、本番導入につなげていくサイクルを回しています。
人とAIエージェントの「違い」と「共通点」
人とAIエージェントが協働する仕組みを考えるうえで、まず押さえておきたいのは両者の構造的な違いと共通点です。
人間の場合
- 頭の中で考え、
- キーボードやマウスなどのUIを通じてシステムに入力し、
- 文書・チケット・スライドといった成果物を作成する。
その結果、ConfluenceやJiraなどに業務の履歴や成果がデータとして蓄積されていきます。
AIエージェントの場合
- LLM(大規模言語モデル)によって、文章を読み、推論し、文章を生成することができます。
- しかし、システムに対して自律的にアクセスすることはできません。
- APIやプラグインなどの「ツール」を、人間があらかじめ与える必要があります。
つまり、AIエージェントに仕事をしてもらうには、
- AIが参照できる形でナレッジがデータ化されていること
- そのデータにアクセスするためのツールが用意されていること
の2つが前提になります。
ナレッジを「頭の中」から「AIの手が届く場所」へ
多くの現場で起きている問題は、ナレッジが担当者の頭の中や個別のチャットにとどまり、AIの手が届く場所まで降りてきていないことです。
KINTOテクノロジーズでは、まずこの前提を整えるところからスタートしました。
- 成果物や業務ドキュメントはConfluenceに集約
- タスクやワークフローはJiraで管理
- それ以外のビジネスデータは、別のクラウドサービスに蓄積
人間はUIを通じてこれらのツールを自然に使えますが、AIエージェントはそうはいきません。
そこで、Rovoに標準で用意されているConfluence・Jiraへのアクセスツールに加え、その他のクラウドデータにアクセス可能な独自ツールも用意。AIが人と同じ情報ソースにアクセスできるようにしています。
人とAIエージェントを結ぶ3つのパターン
ナレッジとツールがそろったうえで重要になるのが、人とAIエージェントをどのような形で接続するかです。
KINTOテクノロジーズでは、主に次の3パターンを活用しています。
- Jiraチケット駆動でAIが動くパターン
- Slack Botとして対話するパターン
- 社内アプリ上での協働パターン
いずれも、APIやModel Context Protocol(MCP)などを組み合わせ、AIが人と同じようにツールを操作できる環境を用意しているのが共通点です。
ここからは、その中でも「日々の業務でどうAIとやりとりしているか」が分かりやすい事例を紹介します。
事例1:Jiraを起点にAIへタスクを依頼し、Confluenceで成果物を受け取る
最初の事例は、調査業務などのタスクをAIエージェントに任せるパターンです。
全体の流れは次のようになります。
- 人がAIに作業を依頼する
例)「特定のテーマについて市場動向を調べてほしい」などの依頼を行う。 - AIがJiraチケットを自動作成
依頼内容にもとづき、AIエージェントがJiraに調査タスクを起票します。 - AIが調査を実施し、Confluenceに成果物を作成
調査結果は、関連するJiraチケットと紐づいたConfluenceページとして自動生成されます。 - 人が成果物をレビューし、フィードバック
成果物を確認し、修正点があればJiraチケットのコメントとして記載します。 - AIがフィードバックを反映して修正
コメント内容を読み取り、AIがConfluenceのドキュメントを更新します。
タスク管理のハブはJira、ナレッジのハブはConfluence、実行主体としてタスクやドキュメントを操作するのはRovo上のAIエージェントという役割分担で、チケット駆動の協働プロセスを構築しています。
さらに、従業員がSlackから仕事を依頼すると、Rovoが裏側でAIエージェントにタスクを割り振る仕組みも整備。
Slack → Rovo → Jira → Confluence という一連の流れの中で、AIが作業を進め、人が最終レビューを行う形です。
事例2:Slackで人とAIが混ざり合って仕事を進める
もう一つのパターンは、Slack上で人とAIが同じチャンネルに存在し、会話ベースで協働するスタイルです。
従業員が日々行っている作業の多くは、次のようなものです。
- Webで情報を検索する
- Jiraのチケットを作成・更新する
- Confluenceのドキュメントを作成・検索する
KINTOテクノロジーズでは、これらの作業をAIエージェントにも行わせるため、Rovo経由で必要なツールへのアクセス権限を付与しています。
その結果、Slack上で
- 「この件の関連チケットを一覧で出して」
- 「さっきの議論をまとめてConfluenceに下書きしておいて」
といった依頼を、雑談に近い感覚でAIに投げかけられるようになりました。
事例1のようなきちんとしたワークフローに乗せる前段階でも、Slack上でラフにAIに手伝ってもらえる環境を整えることで、現場でのAI活用のハードルを下げています。
事例3:秘書のように寄り添う「パーソナルAI」(検証中)
3つ目の事例は、まだ検証段階にある「パーソナルAI」です。
ここで目指しているのは、
- 特定の個人に長く寄り添い、
- その人の業務や好みを理解し、
- 秘書のようにタスク管理や情報整理を支援してくれるAIエージェント
という姿です。
LLMはベンダー側のアップデートによって自動的に性能が向上していきますが、ユーザー側でも、
- エージェントのプロンプト設計を継続的に改善し、
- 利用できるツールをチューニングしていくことで、
時間をかけて「その人に合った秘書AI」に育っていくイメージです。
トヨタ生産方式に学ぶ「AI時代の自働化」
KINTOテクノロジーズのAI活用の背景には、トヨタ生産方式で重要なコンセプトである「自働化(じどうか)」が流れています。
ここでいう自働化は、「ニンベンのついた自動化」を意味します。
- 異常があれば人がアンドンを引いてラインを止める
- 機械に任せつつも、人が必要なタイミングで介入できる
私たちは、この考え方をAI活用にも適用し、「AI時代の自働化」と表現しています。
任せる範囲をレベル分けする
AIのハルシネーションリスクをゼロにすることはできません。一方で、すべてを人間が確認し続けるのも現実的ではありません。
そこで、KINTOテクノロジーズでは、業務のリスクや重要度に応じて、AIへ任せる範囲を段階的に定義しています。
- レベル1:すべてAIに任せる
- レベル2:成果物のみ人が確認する
- レベル3:成果物に加え、中間生成物も人が確認する
- レベル4:AIはサポートのみで、成果物は人が作成する
このように、「どの業務を、どのレベルまでAIに任せるか」を設計したうえで、自働化を進めているのがポイントです。
「人とAIは同じ場所で仕事をしているか?」
私たちのチーム繰り返し投げかけていた問いが、次の一言です。
人とAIは、同じ場所で仕事をしているか?
ここで言う「場所」とは、物理的なオフィスではなく、ナレッジが蓄積された場所のことです。
- ナレッジがConfluenceのような一箇所に整理されていれば、
人もAIも同じ前提で仕事ができます。 - 逆に、情報がメールやチャット、ローカルファイルなどに散在していると、
AIは十分な力を発揮できません。
今後、業務データにAIが自然にアクセスできることが前提となる世界において、
- AIを活かすための「情報のため方」
- それに合わせた「人の働き方」
をどう設計するかが、組織にとっての重要なテーマになっていきます。
まとめ:AIエージェントと協働するための5つのポイント
KINTOテクノロジーズの事例から見えてくる、人とAIエージェントの協働のポイントを整理すると、次の5つに集約できます。
- ナレッジをAIがアクセスできる形で蓄積する
ConfluenceやJiraを中心に、業務の結果だけでなく過程もドキュメント化する。 - AIエージェントに適切なツールを渡す
Confluence・Jira・その他クラウドサービスへのアクセス手段を整備し、AIが人と同じ情報ソースを扱えるようにする。 - 人とAIをつなぐ「場」とプロセスを設計する
Jiraチケット駆動、Slack Bot、社内アプリなど、業務にフィットする接点を用意する。 - 「AI時代の自働化」を前提に、任せる範囲を決める
業務のリスクや重要度に応じて、AIへの委譲レベルと人の介入ポイントをあらかじめ定義する。 - 人とAIが「同じ場所」で働けるようにする
ナレッジを一元化し、人とAIが同じ前提・同じコンテキストで仕事を進められる環境をつくる。
AIエージェントを単なる自動化ツールとしてではなく、共通のナレッジベース上で協働するパートナーとして位置づけること。
そして、そのためのナレッジ・ツール・プロセス・ガバナンスを整えることが、これからのAI活用においてますます重要になっていきます。
KINTOテクノロジーズの取り組みが、みなさんの組織におけるAIエージェント活用と業務改革のヒントになれば幸いです。
Q&A

最後にQ&Aで参加者からの質問をリアルタイムに回答していきました。とてもたくさんの質問をいただき、活気のあるQ&Aタイムでした。和気藹々としなかでも鋭い質問やあるあるな疑問もたくさんあり、参加者のみなさんのお役に立ったのではないかと思います。
ACE Tokyoではこのようにさまざまなテーマで情報の共有や議論を行っています。一人で悩むよりACE Tokyoでみんなと相談すれば、皆さんのナレッジを活用してより良い解決策を見つけることができます。
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みなさんのご参加をお待ちしております。