第74回 ACE Tokyo Meetup イベントレポート

みなさん、こんにちは。アトラシアンでコミュニティマーケティングを担当している新村です。今回は9月24日にTISさんに会場をお借りして開催された第74回 ACE Tokyo Meetupの様子をレポートしたいと思います。ACE Tokyoはアトラシアンの公式コミュニティで東京を中心に活動していて、オフラインのイベントを中心にアトラシアンに関心を持つ皆様の交流の場として多くの参加者にお集まりいただいています。

今回のACE Tokyo Meetupは当初9月5日開催予定だったものが、台風の影響で振替開催となりました。また、Dev分科会としての初開催でしたので、どのようなイベントになるのか運営側もドキドキだったのですが、セッション内容もとても刺激的で、その後の懇親会でもいつもと同じように大変盛り上がっていました。こちらのブログではそんなイベントの様子をお届けしたいと思います。


ACE Tokyoは乾杯から始まるイベント

今回はDev分科会の最初のイベントということもあり、Dev分科会のリーダーを務める長阪さんから、分科会としての説明や意気込みなどをお話しいただきました。初めての開催ということでドタバタとして面もありますが、リーダーの長阪さんのキャラクターも相まって、それすら楽しめるのがDev分科会という雰囲気を最初から漂わせていました。そんな勢いのまま、乾杯でACE Tokyo Meetupがスタートしました。


Jira Service Managementを用いた プラットフォームエンジニアリングの取り組み

TIS株式会社 恩田さん

TISの恩田さんからは、Jira Service Managementを社内の開発者ポータルとして導入し、プラットフォーム運用の自動化を行った事例を共有いただきました。

セッション内容の要約はこちらになります。

TISでデジタル基盤オファリングサービスのR&Dを担当しております。
デジタル基盤オファリングサービスは、インフラ環境のサービス提供だけに留まらず、コンサルによる導入支援から、運用までを一気通貫でご提供するソリューションとなります。今回はその中で、仮想サーバ300台規模のプライベートクラウド環境において、Jira Service Managementを使ってプラットフォームエンジニアリングを実現していった際の事例をお話しします。

ことの発端としては、チームが疲弊状態にあり、上司から「皆頑張っているが、なんか大変そう。楽にしたい。」という言葉でした。インタビューしていくとチームの課題として四つが浮き彫りになりました。

·       既存のミドルウェアやSaaSを有効活用できていない「宝の持ち腐れ」

·       忙しくて仕事の仕方を見直しができない「忙殺の罠」

·       ログやイベントは取れても有効活用できていない「手作業が多い」状態

·       ナレッジや情報が属人的になり、散在している「暗黙知」の状態

これらの課題を、チームのマインドに根差す課題とチームの技術力に根差す課題に分類し、それぞれ解決することで、チームが疲弊し改善を行うための体力がないという課題を解決するというアプローチを取りました。
マインドに根差す課題に対しては、現状維持バイアスを取り除くために新しいやり方を浸透させるためのマインドセット変革を行うようにし、業務プロセスの自動化を行いました。また、技術力に根差す課題に対しては、散在するアセットやノウハウをAIにより検索できるようするアプローチと、IaCやAPIを活用した自動化により、人への依存度を減らすことを行いました。

その一環として構築したのが、今回紹介するJira Service Managementを使った開発者ポータルです。

従来の環境ではデータセンター内のサーバーに対して何か作業を行う際に、社内各所から受け付けた依頼を台帳管理し、知識を持ったエンジニアがオフィス内のセキュアルームという場所からデータセンターに接続し作業を行う必要がありました。この結果、何か作業を行う場合には必ずエンジニアがオフィスに行かなければならないという制約と、作業を実施するためには知識を持ったエンジニアが行わなければならないという制約がありました。その結果チームが忙殺されてしまっていました。

そこで、Jira Service Managementをポータルとして設置し、データセンター内のサーバーに対するセルフメニューを開発しました。セルフメニューは入力内容に基づき自動化ルールを実行しAnsibleへAPIを発行します。その後、Ansibleの処理が実行され結果としてサーバーに対して変更や参照を行った結果が利用者に返却されます。これにより、知識を持ったエンジニアがセキュアルームに行ってわざわざ作業をする必要がなくなり、他のチームのメンバーが直接Jira Service Managementにリクエストを登録して処理を実行することができるようになり、メンバーの負担を大きく減らすことができました。同時に、エンジニアが持つ暗黙知をConfluenceに蓄積し、AWSのBedrockを使ってRAGを構築することで、知識の属人化を解消する試みも行っています。

もちろん、これを実現するまでにはさまざまな苦労がありました。

検討段階では、Jira Service Managementの有識者が社内にいなかったり、AnsibleのREST APIの設定やAnsibleとJira Service Managementの役割分担など苦労しました。導入後にも、チームの人数が増えたことでの知識ややり方のばらつきがあったり、UXライティングという概念を学んだりといった点が苦労しました。その後も、他の担当チームと協創していくために、説明するだけではなく、一緒に作る、運用するといった形で伴走を行って信頼を得たり、ディシジョンメーカーとの関係性を構築するなど、さまざまな工夫をしています。

このような形でポータルを作り、自動化を行なったことで作業負荷の軽減を実現することができました。大切なことはまずやってみる勇気だと思います。ぜひ挑戦してみてください。


R&Dの試行錯誤を流通させる──ConfluenceとAI要約で実験→量産の壁を破る仕組み

日産自動車株式会社 長阪さん

日産自動車の長阪さんからは、Confluenceを使ってR&Dにおけるさまざまな実験結果を集約し、Rovoを使って集合知として活用する方法を紹介いただきました。

自動車会社のR&DチームでConfluenceとRovoを使ってナレッジのビックループを作った話をします。
現代の自動車の中ではさまざまなコンピューターが動いていて、それぞれのコンピューターに対して開発を行っています。しかし、それぞれの開発チームどうしでのコミュニケーションには壁がある状態で、自動車に関わるデータはどんどん増えていくのに、仕事の仕方がデータの増え方についていけなくなってしまっていました。

以前の働き方では、ExcelやPowerPoint、メールといったように情報が散在してデータが断絶してしまい、それを口頭によるコミュニケーションで補うという形でした。そのため、データ量が増えるに従って意思決定が遅延するようになっていました。加えて、現代の自動車ではハードウェアでの差別化が難しく、ソフトウェアが差別化の主役となってきたため、開発のスピードが指数関数的に向上してしまいました。その結果、横展開とトレーサビリティが必須の要素となり、データの断絶をなんとか解決する必要が出てきました。
そこで「社内資料検索AIを作る」というプロジェクトが立ち上がりましたが、内製AIの限界として、「汎用性が低く、陳腐化しやすい」や「フォーマットが限定的で拡張性に乏しい」という問題が明らかになりました。そこで、自社専用ナレッジAIを作るより、進化し続ける基盤に乗る方が"早くて強い"という考えのもと、ConfluenceとRovoを使った解決策を選択しました。
実験部門では、さまざまな報告書を作成してSharePointに置いていたため、検索性が悪く同じような実験を行ったりしていて効率が悪かったものを、Confluenceに報告書の内容を取り込んでRovoを使って検索性を向上させたり、さまざまなデータをRovoで解析ができるようにしました。また、ConfluenceのトップページにRovoのエージェントを設置し、他のチームからの問い合わせはRovoに任せるようにしました。
導入にあたっては、社内でも新しい働き方に対する反発は少なくありませんでした。それに対しては、具体的にどのくらい効率化されたかなどのデータを示して納得してもらえるようにしました。

ConfluenceとRovoを集合知のハブとして活用し、自動車開発におけるフィードバックのビックループを構築したいと考えています。さらに、可能であればJira Alignを使って意思決定の高速化をしたいと思います。


懇親会スタート!

今回もリックソフトさんにスポンサーとして、フードとドリンクを提供いただきました。リックソフトの酒井さんから乾杯のご挨拶をいただき、懇親会がスタートしました。

今回はテーマ的にも色々と興味を持った参加者の方も多かったようで、会場のあちこちで議論の輪ができていました。


そして最後にいつものポーズで集合写真

ACE Tokyoではこのようにさまざまなテーマで情報の共有や議論を行っています。一人で悩むよりACE Tokyoでみんなと相談すれば、皆さんのナレッジを活用してより良い解決策を見つけることができます。

ぜひ、ご参加ください。

イベントはこちらのサイトで告知していますので、「Join」ボタンからご登録をお願いします。